こんにちは、turtleです。現在電磁気学を学んでおりまして、その備忘録のような形でこのブログを書かせていただいております。基本的に大学の内容となっていますが、数式さえ乗り越えれば高校生でも理解できると思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。
親記事において、電荷分布からスカラーポテンシャル\(\phi\)を求める2階偏微分方程式である、静電場におけるポアソン方程式を紹介しました。
これを使って電場を求めるのがマクスウェル方程式で直接、電荷分布から電場を求めるのに比べて簡単であるのは、ベクトル\(\boldsymbol{E}\)を解かずにスカラー\(\phi\)を解けばよいためでしたね。また、別稿で説明する境界条件の設定について、電場\(\boldsymbol{E}\)よりも電位\(\phi\)の方が条件を与えやすいのも理由の一つでした。
本稿では、この静電場におけるポアソン方程式の性質やその解き方について説明していきます。
静電場におけるポアソンの方程式
静電場におけるポアソン方程式を再掲しておきます。
定理2.4.5(静電場におけるポアソンの方程式)
以下の2階偏微分方程式がつねに成立している。ただし、\(\rho(\boldsymbol{r})\)は各位置\(\boldsymbol{r}\)での電荷密度、\(\phi(\boldsymbol{r})\)は各位置\(\boldsymbol{r}\)での電位を表す。
$$
– \nabla^2 \phi(\boldsymbol{r}) = \frac{\rho(\boldsymbol{r})}{\epsilon_0}
$$
この2階偏微分方程式は、ある真空領域内での静電場のようすを求めるためのきわめて重要な式です。ポアソンの方程式についていくつか成立することがあるので、これを示しながら、ポアソンの方程式がどういう性質を持つのか見ていきます。
ポアソン方程式の解の一意性
静電場におけるポアソン方程式は、電荷分布と境界条件が与えられれば、その解が一つに定まることが数学的にわかっていますが、これを本稿で扱います。
まず重要なこととして、領域内の電荷分布\(\rho\)が与えられても、それだけでは電位\(\phi\)は一意に定まりません。これは、\(\phi_1\)がポアソン方程式の解であるとき、これに適当な調和関数(\(\nabla^2 f = 0\)を満たす関数)\(f\)を足した\(\phi_1+f\)もこの方程式の解になりうるからです。
この解を一意に定める条件こそが、境界条件です。一般にポアソン方程式を使うときは、ある領域\(V\)を定義域として、この領域中のある位置\(\boldsymbol{r}\)における\(\phi(\boldsymbol{r})\)を求めることを目的にしています。この領域\(V\)の「縁」での条件が境界条件であって、具体的に解を一意に定める条件として次のようなものが知られています。
境界条件の与え方
領域\(V\)が有限であるときは(1)から(3)のような境界条件を、領域\(V\)が無限(縁がない全空間)であるときは(4)のような境界条件を与えます。
(1)ディリクレ条件:境界上のすべての場所での、スカラーポテンシャル\(\phi\)の値を与える条件
領域\(V\)の表面\(S\)上のある位置\(\boldsymbol{r}\)におけるスカラーポテンシャル\(\phi(\boldsymbol{r})\)の関数形\(f(\boldsymbol{r})\)が与えられる条件です。
(2)ノイマン条件:境界上のすべての場所での、スカラーポテンシャル\(\phi\)の法線方向微分の値を与える条件
領域\(V\)の表面\(S\)上のある位置\(\boldsymbol{r}\)におけるスカラーポテンシャルの法線方向微分\(\frac{\partial \phi}{\partial n}\)の関数形\(g(\boldsymbol{r})\)が与えられる条件です。
このノイマン条件については、スカラーポテンシャル\(\phi\)の値には定数差分のずれが残ります(\(\phi\)が解であるとすると、定数\(C\)に対して\(\phi+C\)も解になります)。物理的にはスカラーポテンシャルの差(電位差)、あるいは電場のみが意味を持つのでこれで問題ないですが、スカラーポテンシャル\(\phi\)の関数形まで確定させたい場合には、領域\(V\)中のあるどこか1点\(\boldsymbol{r}_0\)でのスカラーポテンシャルの値\(\phi(\boldsymbol{r}_0)\)を与える必要があります。
(3)混合境界条件:境界の一部ではスカラーポテンシャル\(\phi\)の値を、残りの部分ではスカラーポテンシャル\(\phi\)の法線方向微分の値を与える条件
境界\(S\)を2つの部分\(S_1\)と\(S_2\)に分け、\(S_1\)上では\(\phi\)の関数形が、\(S_2\)上では \(\frac{\partial \phi}{\partial n}\)の関数形が与えられる条件です。
現実的な実験系ではこれが最も一般的です(例えば、境界の一部は電圧をつないだ金属板、残りの部分は空気中に開放されているときは、金属板部分では\(\phi\)の関数形が、残りの部分では \(\frac{\partial \phi}{\partial n}\)の関数形が与えやすいですね)。
(4)無限遠での条件:無限遠でスカラーポテンシャル\(\phi\)が漸近する関数形を与える条件
\(|\boldsymbol{r}| \to \infty\)で\(\phi(\boldsymbol{r}) \to \phi_{\text{ext}}(\boldsymbol{r})\)なる関数形\(\phi_{\text{ext}}(\boldsymbol{r})\)を与える条件です(例えば、電荷がある有限の領域に集まっているときは、無限遠でのスカラーポテンシャルの値は0に収束します)。
ではそれぞれの境界条件(1)から(4)において、ポアソンの方程式の解が一意に定まることを証明していきます。まず、そのための補題をいくつか紹介します。ここからしばらくは、証明が続くので、必要がない方は読み飛ばしてもらってかまいません。
補題2.4.5.1
ポアソンの方程式の解\(\phi(\boldsymbol{r})\)は、電荷密度\(\rho(\boldsymbol{r})\)が0であるような位置\(\boldsymbol{r}\)では、極大や極小をとりえない。
補題2.4.5.1の証明
電荷のない位置\(\boldsymbol{r}\)で極値をとると仮定すると、2次微係数は0にはならないので、
$$
-\nabla^2 \phi(\boldsymbol{r}) \ne 0
$$一方で、位置\(\boldsymbol{r}\)に電荷密度\(\rho(\boldsymbol{r})\)が0であることより、
$$
-\nabla^2 \phi(\boldsymbol{r}) = 0
$$この2式は矛盾するので仮定は誤りで、定理が示された。□
補題2.4.5.2
領域内に電荷がなく、またその領域の境界で電位\(\phi(\boldsymbol{r})\)が一定値\(\phi_0\)をとるとき、その領域全体で電位\(\phi(\boldsymbol{r})=\phi_0\)である。
補題2.4.5.2の証明
その領域中で電位\(\phi(\boldsymbol{r})=\phi_0\)でない位置\(\boldsymbol{r}\)があると仮定すると、領域内のどこかで電位\(\phi(\boldsymbol{r})\)が最大あるいは最小をとるが、これは補題2.4.5.1に矛盾する。よって仮定は誤りで、定理が示された。□
補題2.4.5.3
単位ベクトル\(\boldsymbol{n}\)方向のスカラーポテンシャル\(\phi\)の微分を\(\frac{\partial \phi}{\partial n}\)とかくとき、これについて、以下が成立する。
$$
\frac{\partial \phi}{\partial \boldsymbol{n}} = \nabla \phi(\boldsymbol{r}) \cdot \boldsymbol{n} = – \boldsymbol{E}(\boldsymbol{r}) \cdot \boldsymbol{n}
$$
補題2.4.5.3の証明
\(\boldsymbol{n}\)の直交座標成分表示を\(n_x,n_y,n_z\)とすると、スカラーポテンシャル\(\phi(\boldsymbol{r})\)の単位ベクトル\(\boldsymbol{n}\)方向への微分の定義より、
$$
\frac{\partial \phi}{\partial \boldsymbol{n}} = \frac{d}{ds} \phi(x + s n_x, y + s n_y, z + s n_z) \bigg|_{s=0} = \frac{\partial \phi}{\partial x}\frac{d(x + s n_x)}{ds} + \frac{\partial \phi}{\partial y}\frac{d(y + s n_y)}{ds} + \frac{\partial \phi}{\partial z}\frac{d(z + s n_z)}{ds} = \nabla \phi(\boldsymbol{r}) \cdot \boldsymbol{n}
$$静電場\(\boldsymbol{E}(\boldsymbol{r})\)とスカラーポテンシャル\(\phi(\boldsymbol{r})\)の間には、\(\boldsymbol{E} = -\nabla \phi\)が成り立つことより、
$$
\nabla \phi = – \boldsymbol{E}(\boldsymbol{r})
$$であるから、これを\(\nabla \phi(\boldsymbol{r}) \cdot \boldsymbol{n}\)に代入すると、以下が得られる。
$$
\frac{\partial \phi}{\partial n} = (-\boldsymbol{E}(\boldsymbol{r})) \cdot \boldsymbol{n} = – \boldsymbol{E}(\boldsymbol{r}) \cdot \boldsymbol{n}
$$□
これで準備ができたので、これらを用いて、それぞれの境界条件(1)から(4)において、ポアソンの方程式の解が一意に定まることを証明していきます。
定理2.4.5.4(ディリクレ条件による解の一意性)
境界を除く領域中の電荷分布\(\rho(\boldsymbol{r})\)と、境界上のすべての位置における\(\phi(\boldsymbol{r})\)の値が与えられたとき、ポアソンの方程式の解\(\phi(\boldsymbol{r})\)は一意に定まる。
定理2.4.5.4の証明
与えられた境界を除く領域中の電荷分布\(\rho(\boldsymbol{r})\)と、境界上のすべての位置における\(\phi(\boldsymbol{r})\)の値に対して、\(\phi_1(\boldsymbol{r})\),\(\phi_2(\boldsymbol{r})\)がいずれもポアソンの方程式を満たすとする。まず、
$$
\begin{equation}
\begin{cases}
-\nabla^2 \phi_1(\boldsymbol{r}) = \frac{\rho(\boldsymbol{r})}{\epsilon_0} \\
-\nabla^2 \phi_2(\boldsymbol{r}) = \frac{\rho(\boldsymbol{r})}{\epsilon_0}
\end{cases}
\end{equation}
$$であるので、境界を除く領域内のすべての位置で
$$
-\nabla^2 \left(\phi_1(\boldsymbol{r})-\phi_2(\boldsymbol{r}) \right) = 0
$$が成立する。また境界上で\(\phi_1(\boldsymbol{r})\),\(\phi_2(\boldsymbol{r})\)は同じ値をとることから、境界上のすべての位置で
$$
\phi_1(\boldsymbol{r})-\phi_2(\boldsymbol{r})=0
$$を満たす。ゆえに、\(\phi_1(\boldsymbol{r})-\phi_2(\boldsymbol{r})\)は、領域内に電荷のないときのポアソンの方程式の1つの解と数学的に等しい。補題2.4.5.2より、ある領域内に電荷がなく、またその領域の境界で\(\phi(\boldsymbol{r})\)が一定値0をとるとき、その領域全体でスカラーポテンシャルの値は0であるため、領域内のすべての位置で
$$
\phi_1(\boldsymbol{r})-\phi_2(\boldsymbol{r})=0
$$であることから、定理が示された。□
定理2.4.5.5(ノイマン条件による解の一意性)
境界を除く領域中の電荷分布\(\rho(\boldsymbol{r})\)と、境界上のすべての位置におけるスカラーポテンシャルの法線方向の微分\(\frac{\partial \phi(\boldsymbol{r})}{\partial \boldsymbol{n}}\)の値が与えられたとき、ポアソンの方程式の解\(\phi(\boldsymbol{r})\)は定数差分のずれを除いて一意に定まる。
定理2.4.5.5の証明
与えられた境界を除く領域中の電荷分布\(\rho(\boldsymbol{r})\)と、境界上のすべての位置における\(\phi(\boldsymbol{r})\)の値に対して、\(\phi_1(\boldsymbol{r})\),\(\phi_2(\boldsymbol{r})\)がいずれもポアソンの方程式を満たすとすると、
$$
\begin{equation}
\begin{cases}
-\nabla^2 \phi_1(\boldsymbol{r}) = \frac{\rho(\boldsymbol{r})}{\epsilon_0} \\
-\nabla^2 \phi_2(\boldsymbol{r}) = \frac{\rho(\boldsymbol{r})}{\epsilon_0}
\end{cases}
\end{equation}
$$であるので、境界を除く領域内のすべての位置で以下が成立する。
$$
-\nabla^2 \{ \phi_1(\boldsymbol{r})-\phi_2(\boldsymbol{r}) \} = 0
$$また境界上で\(\frac{\partial \phi_1(\boldsymbol{r})}{\partial \boldsymbol{n}}=\frac{\partial \phi_2(\boldsymbol{r})}{\partial \boldsymbol{n}}\)が成立しているので、補題2.4.5.3より、以下が成立する。
$$
\frac{\partial (\phi_1(\boldsymbol{r})-\phi_2(\boldsymbol{r}))}{\partial \boldsymbol{n}}=(\nabla \{ \phi_1(\boldsymbol{r})-\phi_2(\boldsymbol{r}) \}) \cdot \boldsymbol{n}=0
$$>>グリーンの第一恒等式を利用すると数学的に以下が成立する。
$$
\displaystyle \int_V \{\phi_1(\boldsymbol{r})-\phi_2(\boldsymbol{r})\} \nabla^2 \{\phi_1(\boldsymbol{r})-\phi_2(\boldsymbol{r})\} + \displaystyle \int_V [ \nabla \{\phi_1(\boldsymbol{r})-\phi_2(\boldsymbol{r})\} ]^2 dV = \displaystyle \int_S \{\phi_1(\boldsymbol{r})-\phi_2(\boldsymbol{r})\} \left( \nabla \{\phi_1(\boldsymbol{r})-\phi_2(\boldsymbol{r})\} \cdot \boldsymbol{n} \right) dS
$$この式に先にあげた式\(\nabla^2 \{ \phi_1(\boldsymbol{r})-\phi_2(\boldsymbol{r}) \} = 0\)、\(\nabla \{ \phi_1(\boldsymbol{r})-\phi_2(\boldsymbol{r}) \}) \cdot \boldsymbol{n}=0 \)を代入すると、
$$
\displaystyle \int_V [ \nabla \{ \phi_1(\boldsymbol{r})-\phi_2(\boldsymbol{r}) \}]^2 dV = 0
$$となる。被積分関数はつねに0以上であるので、領域中のあらゆる位置\(\boldsymbol{r}\)で、\(\nabla \{ \phi_1(\boldsymbol{r})-\phi_2(\boldsymbol{r}) \}=0 \)であるから、\(\phi_1(\boldsymbol{r})-\phi_2(\boldsymbol{r})\)は定数である。よって示された。□
定理2.4.5.6(混合境界条件による解の一意性)
境界を除く領域中の電荷分布\(\rho(\boldsymbol{r})\)が与えられ、また、境界上のすべての位置において\(\phi(\boldsymbol{r})\)の値もしくは\(\frac{\partial \phi(\boldsymbol{r})}{\partial \boldsymbol{n}}\)の値が与えられたとき、ポアソンの方程式の解\(\phi(\boldsymbol{r})\)は一意に定まる。
定理2.4.5.6の証明
領域\(V\)の境界\(S\)が、スカラーポテンシャル\(\phi\)が与えられた部分境界\(S_1\)と、法線微分\(\frac{\partial \phi}{\partial n}\)が与えられた部分境界\(S_2\)の和で構成されているとする。ここで、条件を満たす2つの解、\(\phi_1(\boldsymbol{r})\) と \(\phi_2(\boldsymbol{r})\) が存在すると仮定する。
与えられた境界を除く領域中の電荷分布\(\rho(\boldsymbol{r})\)と、境界上のすべての位置における\(\phi(\boldsymbol{r})\)の値に対して、\(\phi_1(\boldsymbol{r})\),\(\phi_2(\boldsymbol{r})\)がいずれもポアソンの方程式を満たすとすると、
$$
\begin{equation}
\begin{cases}
-\nabla^2 \phi_1(\boldsymbol{r}) = \frac{\rho(\boldsymbol{r})}{\epsilon_0} \\
-\nabla^2 \phi_2(\boldsymbol{r}) = \frac{\rho(\boldsymbol{r})}{\epsilon_0}
\end{cases}
\end{equation}
$$であるので、境界を除く領域内のすべての位置で以下が成立する。
$$
-\nabla^2 \{ \phi_1(\boldsymbol{r})-\phi_2(\boldsymbol{r}) \} = 0
$$また、境界上の条件については、境界\(S_1\)上では \(\phi_1 = \phi_2\)であるため、
$$
\phi_1(\boldsymbol{r})-\phi_2(\boldsymbol{r})=0 \quad (\boldsymbol{r} \in S_1)
$$境界\(S_2\)上では \(\frac{\partial \phi_1}{\partial n} = \frac{\partial \phi_2}{\partial n}\)であるため、補題2.4.5.3より、以下が成立する。
$$
\frac{\partial (\phi_1(\boldsymbol{r})-\phi_2(\boldsymbol{r}))}{\partial \boldsymbol{n}}=(\nabla \{ \phi_1(\boldsymbol{r})-\phi_2(\boldsymbol{r}) \}) \cdot \boldsymbol{n}=0 \quad (\boldsymbol{r} \in S_2)
$$さらに、>>グリーンの第一恒等式を利用すると数学的に以下が成立する。
$$
\displaystyle \int_V \{\phi_1(\boldsymbol{r})-\phi_2(\boldsymbol{r})\} \nabla^2 \{\phi_1(\boldsymbol{r})-\phi_2(\boldsymbol{r})\} + \displaystyle \int_V [ \nabla \{\phi_1(\boldsymbol{r})-\phi_2(\boldsymbol{r})\} ]^2 dV = \displaystyle \int_S \{\phi_1(\boldsymbol{r})-\phi_2(\boldsymbol{r})\} \left( \nabla \{\phi_1(\boldsymbol{r})-\phi_2(\boldsymbol{r})\} \cdot \boldsymbol{n} \right) dS
$$
先に見たように境界を除く領域\(V\)内で、\(-\nabla^2 \{ \phi_1(\boldsymbol{r})-\phi_2(\boldsymbol{r}) \} = 0\)であった。また、面\(S_1\)上では\(\phi_1(\boldsymbol{r})-\phi_2(\boldsymbol{r})=0 \)、面\(S_2\)上では\(\nabla \{\phi_1(\boldsymbol{r})-\phi_2(\boldsymbol{r})\} \cdot \boldsymbol{n}=0 \)が成り立っているため、右辺はともに0になるので、これらを代入すると、$$
\displaystyle \int_V [ \nabla \{ \phi_1(\boldsymbol{r})-\phi_2(\boldsymbol{r}) \}]^2 dV = 0
$$となる。被積分関数はつねに0以上であるので、領域中のあらゆる位置\(\boldsymbol{r}\)で、\(\nabla \{ \phi_1(\boldsymbol{r})-\phi_2(\boldsymbol{r}) \}=0 \)であるから、\(\phi_1(\boldsymbol{r})-\phi_2(\boldsymbol{r})\)は定数\(C\)である。
境界\(S_1\)上で \(\phi_1(\boldsymbol{r})-\phi_2(\boldsymbol{r}) = 0\) であるため、定数\(C\)は\(0\)より、領域全体で \(\phi_1(\boldsymbol{r})-\phi_2(\boldsymbol{r})=0\)、すなわち \(\phi_1(\boldsymbol{r}) = \phi_2(\boldsymbol{r})\) となり、解はたしかに一意に定まる。□
定理2.4.5.7(無限遠での条件による解の一意性)
無限に広い空間中の電荷分布\(\rho(\boldsymbol{r})\)と、\(|\boldsymbol{r}| \to \infty\)で\(\phi(\boldsymbol{r}) \to \phi_{\text{ext}}(\boldsymbol{r})\)なる関数形\(\phi_{\text{ext}}(\boldsymbol{r})\)が与えられたとき、ポアソンの方程式の解\(\phi(\boldsymbol{r})\)は一意に定まる。
定理2.4.5.7の証明
全空間を領域\(V\)とし、その境界\(S\)を半径\(R \to \infty\)の球の表面(無限遠球面)とみなす。
定理の仮定より、無限遠、すなわち境界\(S\)上において、スカラーポテンシャル\(\phi(\boldsymbol{r})\)は特定の関数形をとることが指定されているが、これは、境界\(S\)上のすべての位置において\(\phi(\boldsymbol{r})\)の値が与えられている条件(ディリクレ境界条件)に他ならない。
定理2.4.5.4(ディリクレ条件による解の一意性)が、領域中の電荷分布\(\rho\)と、境界上の\(\phi\)の値が与えられれば、解は一意に定まることを保証しており、本定理の仮定はこの前提条件をすべて満たしているため、ポアソン方程式の解\(\phi(\boldsymbol{r})\)は全空間において一意に定まると示された。□
以上より、領域\(V\)内での静電場\(\boldsymbol{E}\)やスカラーポテンシャル\(\phi\)の表式を解析的に求めるために必要なものは、その領域\(V\)内における電荷分布\(\rho\)と、(1)から(4)のうちのどれかの境界条件のみであることが分かりました。
さらに解の一意性から、次のことも直ちにいえますね。
系2.4.5.8
領域\(V\)の外側の電荷分布がどのようであろうと、境界条件と領域\(V\)内の電荷分布さえ等しいならば、領域\(V\)内の静電場\(\boldsymbol{E}\)は等しい。
この系2.4.5.8は鏡像法など、静電場を実際に求めるときに使う方法の裏付けとなっています。では、ここからは全空間におけるポアソン方程式の解析的な解を紹介します。
静電場におけるポアソン方程式の解
定理2.4.5.9
各位置\(\boldsymbol{r}\)での電荷密度\(\rho(\boldsymbol{r})\)が与えられたとする。領域が分極の生じない自由空間であり、無限遠で\(\phi(\boldsymbol{r})=0\)であるとしたとき、ポアソンの方程式の解はただ一つで、以下で与えられる。
$$
\phi(\boldsymbol{r})=\displaystyle \int_{V’} \frac{\rho(\boldsymbol{r’})dV’}{4\pi\epsilon_0|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r’}|}
$$
定理2.4.5.9の証明
>>ディラックのデルタ関数における恒等式として、
$$
\nabla^2 \left( \frac{1}{|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r’}|} \right) = -4\pi \delta(\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r’})
$$$$
\displaystyle \int f(\boldsymbol{x})\delta(\boldsymbol{x}-\boldsymbol{a})d\boldsymbol{x} = f(\boldsymbol{a})
$$を計算の際に用いる。定理で与えられた解
$$
\phi(\boldsymbol{r})=\displaystyle \int_{V’} \frac{\rho(\boldsymbol{r’})dV’}{4\pi\epsilon_0|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r’}|}
$$をポアソンの方程式の左辺に代入すると、
$$
– \nabla^2 \left( \displaystyle \int_{V’} \frac{\rho(\boldsymbol{r’})dV’}{4\pi\epsilon_0|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r’}|} \right) = \frac{1}{4\pi\epsilon_0} \int_{V’} \rho(\boldsymbol{r’}) \left[ \nabla^2 \left( \frac{1}{|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r’}|} \right) \right] dV’ = -\frac{1}{\epsilon_0} \int_{V’} \rho(\boldsymbol{r’}) \delta(\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r’}) dV’ = -\frac{1}{\epsilon_0} \rho(\boldsymbol{r})
$$であることより、与えられた式はたしかにポアソンの方程式を満たしている。
定理2.4.5.7より、無限に広い空間中の電荷分布\(\rho(\boldsymbol{r})\)と、\(|\boldsymbol{r}| \to \infty\)で\(\phi(\boldsymbol{r}) \to \phi_{\text{ext}}(\boldsymbol{r})\)なる関数形\(\phi_{\text{ext}}(\boldsymbol{r})\)が与えられたとき、ポアソンの方程式の解\(\phi(\boldsymbol{r})\)は一意に定まるため、
$$
\phi(\boldsymbol{r})=\displaystyle \int_{V’} \frac{\rho(\boldsymbol{r’})dV’}{4\pi\epsilon_0|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r’}|}
$$が唯一の解である。よって、示された。□
以上、静電場におけるポアソン方程式の性質やその解き方になります。

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