ビオサバールの法則を仮定したときの磁場におけるアンペールの法則の証明

こんにちは、turtleです。現在電磁気学を学んでおりまして、その備忘録のような形でこのブログを書かせていただいております。基本的に大学の内容となっていますが、数式さえ乗り越えれば高校生でも理解できると思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。

ビオサバールの法則を仮定したとき、そこから磁場におけるアンペールの法則を証明できることは、親記事ですでに示しました。ただ数式に埋もれてしまう証明であったため、本稿では、ビオサバールの法則を仮定したときの、磁場におけるアンペールの法則の直感的な証明を与えることにします。

ここで、時間変化しない、積分形のマクスウェル方程式は次のようになります。

定理2.4.4.1(積分形のマクスウェル方程式)
電場\(\boldsymbol{E}\)、磁場\(\boldsymbol{B}\)に対して成り立つ、以下の4つの方程式を積分形のマクスウェル方程式と呼ぶ。これらは微分形のマクスウェル方程式と等価である。

(1) 電場におけるガウスの法則(積分形)
任意の閉曲面\(S\)に対し、その閉曲面内部に含まれる全電荷の合計を\(Q\)とすると、
$$
\oint_{S} \boldsymbol{E} \cdot \boldsymbol{n} dS = \frac{Q}{\epsilon_0}
$$(2) 磁場におけるガウスの法則(積分形)
任意の閉曲面\(S\)に対して、
$$
\oint_{S} \boldsymbol{B} \cdot \boldsymbol{n} dS = 0
$$(3) 電場における渦なしの法則(積分形)
任意の閉曲線\(C\)について、その閉曲線を縁とする任意の曲面を\(S\)とすると、
$$
\oint_{C} \boldsymbol{E} \cdot d\boldsymbol{r} = 0
$$(4) 磁場におけるアンペールの法則(積分形)
任意の閉曲線\(C\)について、その閉曲線を縁とする任意の曲面を\(S\)として、その曲面を通過する全電流の、閉曲線\(C\)の向きに右ねじを回して進む向きを正とした合計を\(I\)とすると、
$$
\oint_{C} \boldsymbol{B} \cdot d\boldsymbol{r} = \mu_0 I
$$ただし、\(\epsilon_0\)は真空の誘電率、\(\mu_0\)は真空の透磁率である。

この第4式が積分形の磁場におけるアンペールの法則の表式で、別稿において、微分形の磁場におけるアンペールの法則\(\nabla \times \boldsymbol{B} = \mu_0 \boldsymbol{j}\)と等価であることを示しました。
微分形に比べ、積分形はその式の意味を直感的に理解しやすいことが特徴です。磁場におけるアンペールの法則の左辺\(\oint_{C} \boldsymbol{B} \cdot d\boldsymbol{r} \)は、閉曲線\(C\)上での磁場の線積分、つまり、磁場がどれだけ強い渦を作っているかを示す量です。これがその閉曲線を縁とする任意の曲面\(S\)を通過する全電流の合計を\(I\)に比例しますから、結局この式は「磁場がどれだけ渦を作るかは回路を貫く電流に比例する」ということを述べていますね。

ではここからは、当初の目標である、ビオサバールの法則を仮定したときの、磁場におけるアンペールの法則の証明をしていきます。これの準備としての補題がいくつかありますが、別稿ですでに証明は済ませてあるので、ここでは証明を省略して再掲します。

補題2.4.4.6(電気双極子)
間隔を\(d\)だけ離しておかれた、位置\(\frac{\boldsymbol{d}}{2}\)の点電荷\(q\)と位置\(-\frac{\boldsymbol{d}}{2}\)の点電荷\(-q\)について、この2つの点電荷間の距離に対して十分遠方の位置\(\boldsymbol{r}\)における静電場\(\boldsymbol{E}(\boldsymbol{r})\)の表式は以下のようになる。
$$
\boldsymbol{E}(\boldsymbol{r})=\frac{1}{4\pi\epsilon_0}\left[ \frac{3(\boldsymbol{p} \cdot \boldsymbol{r})\boldsymbol{r}}{r^5}-\frac{\boldsymbol{p}}{r^3} \right]
$$ただし、\(\boldsymbol{p}\)は電気双極子に対して定まる定ベクトルで、大きさは\(qd\)、負の点電荷から正の点電荷へ向かう方向を向いている。

補題2.4.4.7(磁気双極子)
原点付近にある面積\(S\)の微小な閉回路\(C\)に定常電流\(I\)が流れているとする。このとき、回路のサイズに対して十分遠方にある観測点\(\boldsymbol{r}\)(ただし、回路上の位置を\(\boldsymbol{r’}\)としたとき、\(|\boldsymbol{r}| \gg |\boldsymbol{r’}|\)である)における磁場\(\boldsymbol{B}(\boldsymbol{r})\)の表式は、以下のようになる。
$$
\boldsymbol{B}(\boldsymbol{r}) = \frac{\mu_0}{4\pi} \left[ \frac{3(\boldsymbol{m} \cdot \boldsymbol{r})\boldsymbol{r}}{r^5} – \frac{\boldsymbol{m}}{r^3} \right]
$$ただし、\(\boldsymbol{m}\)は微小な閉回路\(C\)に対して定まる定ベクトルで、大きさは\(IS\)、回路を含む平面に対して垂直で、電流の方向に右ねじを回して進む方向を向いている。

補題2.4.4.8(無限に長い直線電流のつくる磁場)
\(z\)軸上を正方向に流れる無限に長い直線電流\(I\)が作る磁場\(\boldsymbol{B}\)は、導線からの距離\(r\)の関数として、
$$
\boldsymbol{B}(r) = \frac{\mu_0 I}{2\pi r} \boldsymbol{e}_\theta
$$とかける。ただし\(\boldsymbol{e}_\theta\)は、3次元円筒座標系において\(\theta\)が増加する方向、つまり、\(z\)軸正の位置から原点を見たときの反時計回りの方向の単位ベクトルである。

補題2.4.4.9
閉経路\(C\)を縁(境界)とするような、任意の曲面\(\Omega\)を仮想的に張り、この曲面\(\Omega\)全体を網の目状に無数の微小な区画(メッシュ)に分割する。各微小区画の縁に沿って、元の電流\(I\)と同じ強さの電流が流れていると仮定すると、これは現象的には、閉経路\(C\)を流れる一つの大きな電流と等価である。

さて、前提知識として示す補題はここまでです。

まず、補題2.4.4.6と補題2.4.4.7より、
原点付近にある面積\(S\)の微小な閉回路\(C\)に定常電流\(I\)が流れているとするときの、回路のサイズに対して十分遠方にある観測点\(\boldsymbol{r}\)における磁場\(\boldsymbol{B}(\boldsymbol{r})\)の表式と、
間隔を\(d\)だけ離して原点対称におかれた、点電荷\(q\)と\(-q\)について、この2つの点電荷間の距離に対して十分遠方の位置\(\boldsymbol{r}\)における静電場\(\boldsymbol{E}(\boldsymbol{r})\)の表式
は、\(\frac{1}{\epsilon_0}\)と\(\mu_0\)、\(\boldsymbol{p}\)と\(\boldsymbol{m}\)という非常によい対応関係があることが分かります。つまり、回路のサイズに対して十分遠方の観測点では、回路のつくる磁場は磁気双極子の役割をするということです。

また、補題2.4.4.9より、「閉経路\(C\)を流れる一つの大きな電流」は、「曲面\(\Sigma\)を埋め尽くす無数の微小電流ループの集合」と等価であるとみなせることが分かります。

ここから、いくつかのケースに分けて簡単なケースから、磁場におけるアンペールの法則を示していきますよ。

系2.4.4.12
定常電流\(I\)の流れる1つの閉経路\(L\)のみがある空間において、任意の閉経路\(C\)を、2つの閉経路が鎖交しない(互いに絡み合わない)ようにとる。このとき以下が成立する。
$$
\oint_{C} \boldsymbol{B} \cdot d\boldsymbol{r} = 0
$$

系2.4.4.12の証明

任意の閉経路\(C\)を、2つの閉経路が鎖交しない(互いに絡み合わない)ようにとるとは、その閉曲線を縁とする任意の曲面\(S\)を通過する全電流の合計が0となる状態にするということである。このとき、閉経路\(L\)を縁(境界)として、閉経路\(C\)と交わりをもたないような、曲面\(\Omega\)を仮想的に張ることができるため、閉経路\(L\)を流れる一つの大きな定常電流\(I\)は補題2.4.4.9より、このように張った曲面\(\Omega\)を埋め尽くす無数の電流ループの集合と等価といえる。
さて、曲面\(\Omega\)を埋め尽くすすべての電流ループは、その大きさに対して閉経路\(C\)上のすべての点が十分遠方にあるとみなせるほど微小にとることができる。したがって、閉経路\(C\)における、閉経路\(L\)を流れる定常電流\(I\)のつくる磁場の線積分は、補題2.4.4.6と補題2.4.4.7より、磁気双極子の集まりがつくる磁場の線積分とみなせる。
電気双極子とのアナロジーを考えると、電場における渦なしの法則より、静電場の線積分はつねに0である。よって、系2.4.4.12の仮定の下で、\(\oint_{C} \boldsymbol{B} \cdot d\boldsymbol{r} = 0\)が成立する。

系2.4.4.13
定常電流\(I\)の流れる1つの閉経路\(L\)のみがある空間において、任意の閉経路\(C\)を、2つの閉経路が鎖交する(互いに絡み合う)ようにとる。このとき以下が成立する。
$$
\oint_{C} \boldsymbol{B} \cdot d\boldsymbol{r} = \pm \mu_0 I
$$ただし、経路\(C\)の方向に右ねじを回して進む向きと電流の方向が一致しているときは\(\mu_0 I\)、一致していないときは\(-\mu_0 I\))となる。

系2.4.4.13の証明


図2.4.4.13のように、絡まっている2つの閉経路\(C\)と\(L\)に対して、微小円経路\(C_1\)と経路\(C_2\)をとる。ただし、経路\(L\)は円経路\(C_1\)の乗る平面に対して垂直に、かつ円経路\(C_1\)の中心を通るように貫くとする。
まずはじめに、円経路\(C_1\)の半径は経路\(L\)の大きさに比べて十分小さいため、この円経路\(C_1\)上では、導線に流れる電流は無限に長い直線電流と近似することができ、回路の他の部分の影響は無視できるとみなせる。補題2.4.4.8より、無限に長い直線電流\(I\)が作る磁場\(\boldsymbol{B}\)は、円周方向の単位ベクトルを\(\boldsymbol{e}_\theta\)としたとき、導線からの距離\(r\)の関数として、
$$
\boldsymbol{B}(r) = \frac{\mu_0 I}{2\pi r} \boldsymbol{e}_\theta
$$とかけることがわかっているため、微小円経路\(C_1\)における磁場の線積分は
$$
\oint_{C_1} \boldsymbol{B} \cdot d \boldsymbol{r} = \displaystyle \int_0^{2\pi r} \pm B(r) dr = \pm \frac{\mu_0 I}{2\pi r} 2\pi r = \pm \mu_0 I
$$より、経路\(C_1\)の方向に右ねじを回して進む向きと電流の方向が一致しているときは\(\mu_0 I\)、一致していないときは\(-\mu_0 I\)となる。
次に経路\(C_2\)について、これは閉経路\(L\)と絡まり合っていないので、系2.4.4.12より以下が成立する。
$$
\oint_{C_2} \boldsymbol{B} \cdot d\boldsymbol{r} = 0
$$経路\(C_1\)の線積分と経路\(C_2\)の線積分の和は、外周の経路\(C\)における線積分以外の寄与を打ち消すので、
$$
\displaystyle \oint_{C} \boldsymbol{B} \cdot d \boldsymbol{r} = \displaystyle \oint_{C_1} \boldsymbol{B} \cdot d \boldsymbol{r} + \displaystyle \oint_{C_2} \boldsymbol{B} \cdot d \boldsymbol{r} = \pm \mu_0 I
$$経路\(C\)の向きと、微小円経路\(C_1\)の向きは一致するようにとっているので、経路\(C\)の方向に右ねじを回して進む向きと電流の方向が一致しているときは\(\mu_0 I\)、一致していないときは\(-\mu_0 I\)となる。よって、示された。

示す系は以上です。これらから積分形の磁場におけるガウスの法則を示していきます。

定理2.4.4.1の第4式の証明

定常電流場においては、電流線が途切れることなく連続しているので、任意の電流分布は、微小な電流 \(I_1\),\(I_2\),…,\(I_k\),…が流れる無数の閉じた閉経路\(L_1\),\(L_2\),…,\(L_k\)の集まりとして扱える。
このとき、\(I_1\),\(I_2\),…\(I_k\),…がそれぞれ単独で作る磁場を\(\boldsymbol{B}_1\),\(\boldsymbol{B}_2\),…\(\boldsymbol{B}_k\),…とすると、ある位置\(\boldsymbol{r}\)での磁場は、重ね合わせの原理より、
$$
\boldsymbol{B}(\boldsymbol{r}) = \sum_{k} \boldsymbol{B}_k(\boldsymbol{r})
$$と表せる。任意の閉経路\(C\)に沿った磁場の線積分を考えると、以下のようになる。
$$
\oint_{C} \boldsymbol{B}(\boldsymbol{r}) \cdot d\boldsymbol{r} = \oint_{C} \left(\sum_{k} \boldsymbol{B}_k(\boldsymbol{r})\right) \cdot d\boldsymbol{r} = \sum_{k} \left( \oint_{C} \boldsymbol{B}_k(\boldsymbol{r}) \cdot d\boldsymbol{r} \right)
$$ここで、\(\oint_{C} \boldsymbol{B}_k \cdot d\boldsymbol{r}\)について、閉経路\(C\)を縁とする任意の曲面を\(S\)とするとき、電流の流れている閉経路\(L\)と積分経路\(C\)の幾何学的な関係は以下の2通りに分類される。
(i) 電流閉経路\(L_k\)が曲面\(S\)を貫かない場合、系2.4.4.12より、この項は0となる。
(ii) 電流閉経路\(L_k\)が、曲面\(S\)を貫く場合、系2.4.4.13 より、この項は\(\pm \mu_0 I_k\)となる(符号は、電流\(I_k\)の向きが\(C\)の向きに対して右ねじの関係にある場合は正、逆の場合は負となる)。
以上の結果を代入すると、曲面\(S\)を貫かない電流成分はすべて消えて、曲面\(S\)を貫く電流成分のみが残る。
$$
\oint_{C} \boldsymbol{B} \cdot d\boldsymbol{r} = \sum_{k \in \text{non-linking}} 0 + \sum_{k \in \text{linking}} (\pm \mu_0 I_k) = \mu_0 \sum_{k \in \text{linking}} (\pm I_k)
$$ここで、右辺の\(\sum (\pm I_k)\)は、曲面\(S\)を貫くすべての微小電流の代数和であり、これはまさに曲面\(S\)を通過する全電流の、閉曲線\(C\)の向きに右ねじを回して進む向きを正とした合計\(I\)に他ならない。よって、以下が示された。
$$
\oint_{C} \boldsymbol{B} \cdot d\boldsymbol{r} = \mu_0 I
$$

どうでしょうか。これで、磁場におけるアンペールの法則の主張をなんとなく理解できれば問題ないですよ。

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