こんにちは、turtleです。現在力学を学んでおりまして、その備忘録のような形でこのブログを書かせていただいております。基本的に大学の内容となっていますが、数式さえ乗り越えれば高校生でも理解できると思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。
このページは管理人の習熟度に応じて書き足していく予定です。
親記事で述べたように、解析力学とよばれる分野は、これまでの力学で説明できない現象について新たに理論を拡張するものではなく、これまでの力学を数学的に言い換えたものと考えてよいです。つまり、先に述べたように、解析力学の主張自体は目新しいものではないのですが、作用やエネルギーに基づく、より一般的な枠組みを扱うことで、各力学のモデルに依らない方程式や保存則の見方を導入し、現代物理に接続するのにふさわしい形をつくったという意味があります。
解析力学における「ラグランジュ力学」と「ハミルトン力学」は、どちらも力学を数学的に洗練して、再構築したものになりますが、世界を記述するために採用している根本的な原理と変数の選び方が異なります。言い換えると、解析力学には「ラグランジュ力学」と「ハミルトン力学」という2つの記述方法があるということです。
ラグランジュ力学
ラグランジュ力学の構造
先ほど解析力学には「ラグランジュ力学」と「ハミルトン力学」という2つの記述方法があると述べましたが、どちらも一般化座標という、今まで考えてきた座標を拡張した概念を用いるので、先にこれを定義しておきます。
定義A.1(一般化座標の定義)
\(N\)次元空間における各粒子の位置\(\boldsymbol{r}\)は、\(N\)個の変数\(q_1,q_2,…,q_N\)と時間\(t\)でもって表せるが、このときの\(q_1,q_2,…,q_N\)を一般化座標と定義する。
これは例えば、3次元空間を考えると、位置を指定する方法は直交座標\((x_1,x_2,x_3)\)に限らず、極座標\((r,\theta,\phi)\)や円筒座標\((\rho,\theta,z)\)などさまざまありますが、指定方法が何たるかによらず位置を指定できる3変数の組をまとめて一般化座標と呼ぶということです。
さて、話を戻して、この段落ではラグランジュ力学を扱いますが、ラグランジュ力学は「始点と終点を定めたときにその区間における最適なルートを探す」という大局的な視点を持っています。ラグランジュ力学で原理とするのは以下のことです。
原理A.2(オイラーラグランジュ方程式)
力学系の一般化座標を\(\boldsymbol{q}=(q_1,q_2,…,q_N)\)としたとき、力学系に対応してラグランジアン\(L(\boldsymbol{q}, \dot{\boldsymbol{q}}, t)\)が定まるならば、\(i=1,2,…,N\)に対して以下が成り立つ。
$$
\frac{\partial L}{\partial q_i} – \frac{d}{dt} \frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i} =0
$$
ラグランジアンというのは”力学系に対して定まる量”であって、上の原理A.2の式を計算するとそれぞれの力学モデルの原理になるような物理量のことです。
というのは、それぞれの力学系(一様重力場とか電磁場とか調和振動子とか)に対して古典力学におけるラグランジアンとか、相対論におけるラグランジアンとかが定まって、例えば古典力学におけるラグランジアンだったら原理A.2の式を計算するとその力学系のニュートンの運動方程式が出てくる、相対論におけるラグランジアンだったら原理A.2の式を計算するとその力学系の相対論的運動方程式が出てくる、といったような具合だということです。
つまり、具体的な物理の内容はラグランジアンに押し込めてしまって、力学の枠組み自体を普遍的に保つ方法が解析力学であるわけですね。
誤解しないでいただきたいのは、ラグランジアンの定義が原理A.2である、つまり原理A.2の式を計算すると運動方程式が出てくるような物理量をラグランジアンと定義するというわけではないことです(というか、もしこう定義してしまうと、定義と原理A.2の間で循環論法になってしまいますよね)。
あくまで、ある力学系があったら、その系の粒子の位置を与える一般化座標\(\boldsymbol{q}=(q_1,q_2,…,q_N)\)、その時間微分\(\dot{\boldsymbol{q}}=(\dot{q_1},\dot{q_2},…,\dot{q_N})\)、そして時間\(t\)の関数を引数として定まる物理量でしかないということです。
では、いったんラグランジアンの表式として具体的な状況で何を採用するのかは後回しにして、ラグランジアンの出自や表式、それから原理A.2より導かれることを別の稿で紹介しています。
大事なのは、これらのことがラグランジアンの表式に依らず、力学系にラグランジアンが定まるならばつねに成り立つということです。古典論や相対論、量子論と扱う物理が変わっても、ラグランジュ力学の形式自体は変えなくてよいわけですからね。
>>最小作用の原理
>>拘束のある系のラグランジュ力学
>>ネーターの定理と保存則
ラグランジアンの表式
さて、つい先ほどいったん後回しにした、ラグランジアンの表式として具体的な状況で何を採用するのかという話題を扱っていきましょう。古典論や相対論、量子論と扱う物理が変わるなかで、どういうラグランジアンを採用するかを議論します。まずは古典論からです。
定理A.3(古典力学におけるラグランジアン)
拘束のない力学系において、その変数として直交座標\(x_1,x_2,…,x_N\)を選んだとき、任意の\(i\)に対して\(x_i\)方向のニュートンの運動方程式が\(m_i \ddot{x}_i = F_i\)とかけるとする。ただし、\(F_i\)は
$$
F_i = -\frac{\partial V}{\partial x_i} + \frac{d}{dt}\left(\frac{\partial V}{\partial \dot{x}_i}\right)
$$なるスカラー量\(V(\boldsymbol{x}, \dot{\boldsymbol{x}}, t)\)が存在するという条件を満たす。このとき、\(K=\sum_{i=1}^N (m_i \dot{x_i}^2 /2) \)とすると、力学系のラグランジアン\(L(\boldsymbol{q}, \dot{\boldsymbol{q}}, t)\)として、\(K \left( \dot{\boldsymbol{x}}(\boldsymbol{q}, \dot{\boldsymbol{q}}, t) \right) – V \left( \boldsymbol{x}(\boldsymbol{q}, t), \dot{\boldsymbol{x}}(\boldsymbol{q}, \dot{\boldsymbol{q}}, t) ,t \right)\)を採用できる。
定理A.3の証明
先に準備として(a),(b),(c),(d),(e),(f)式を与える。
まず直交座標\(x_i\)は一般化座標\(\boldsymbol{q}\)と時間\(t\)の関数\(x_i(\boldsymbol{q}, t)\)として表されるので、これを時間で微分すると、速度\(\dot{x}_i\)は合成関数の微分より、
$$
\dot{x}_i = \frac{d x_i}{dt} = \sum_{j=1}^N \frac{\partial x_i}{\partial q_j} \frac{d q_j}{dt} + \frac{\partial x_i}{\partial t} \frac{dt}{dt} = \sum_{j=1}^N \frac{\partial x_i}{\partial q_j}\dot{q}_j + \frac{\partial x_i}{\partial t}
$$とかける。この\(\dot{x}_i\)を\(\dot{q}_k\)以外を定数とみなして偏微分すると、\(x_i\)は\(\boldsymbol{q}\)と時間\(t\)の関数であるため、\(\frac{\partial x_i}{\partial q_j}\)や\(\frac{\partial x_i}{\partial t}\)は\(\dot{\boldsymbol{q}}\)を引数に含まないから、合成関数の微分より、
$$
\frac{\partial \dot{x}_i}{\partial \dot{q}_k} = \frac{\partial}{\partial \dot{q}_k} \left( \sum_{j=1}^N \frac{\partial x_i}{\partial q_j}\dot{q}_j + \frac{\partial x_i}{\partial t} \right) = \frac{\partial x_i}{\partial q_k} \qquad \text{(a)}
$$が成り立つ。また(a)式の右辺、\(\partial x_i/\partial q_k\)を時間微分すると、これは\(\boldsymbol{q}\)と時間\(t\)の関数であるため、合成関数の微分より、
$$
\frac{d}{dt} \left( \frac{\partial x_i}{\partial q_k} \right) = \sum_{j=1}^N \frac{\partial}{\partial q_j} \frac{\partial x_i}{\partial q_k} \frac{d q_j}{dt} + \frac{\partial}{\partial t} \frac{\partial x_i}{\partial q_k} \frac{dt}{dt} = \frac{\partial}{\partial q_k} \left( \sum_{j=1}^N \frac{\partial x_i}{\partial q_j} \frac{d q_j}{dt} + \frac{\partial x_i}{\partial t} \right) = \frac{\partial \dot{x}_i}{\partial q_k} \qquad \text{(b)}
$$が成り立つことがわかる。続いて、定理A.3の前提で与えたポテンシャルエネルギー\(V(\boldsymbol{x}, \dot{\boldsymbol{x}}, t)\)について、\(V\)の\(q_j\)および\(\dot{q}_j\)による偏微分を計算すると、
$$
\frac{\partial V}{\partial q_j} = \sum_{i=1}^N \left( \frac{\partial V}{\partial x_i} \frac{\partial x_i}{\partial q_j} + \frac{\partial V}{\partial \dot{x}_i} \frac{\partial \dot{x}_i}{\partial q_j} \right) + \frac{\partial V}{\partial t} \frac{\partial t}{\partial q_k} = \sum_{i=1}^N \left( \frac{\partial V}{\partial x_i} \frac{\partial x_i}{\partial q_j} + \frac{\partial V}{\partial \dot{x}_i} \frac{\partial \dot{x}_i}{\partial q_j} \right) \qquad \text{(c)}
$$$$
\frac{\partial V}{\partial \dot{q}_j} = \sum_{i=1}^N \left( \frac{\partial V}{\partial x_i} \frac{\partial x_i}{\partial \dot{q}_j} + \frac{\partial V}{\partial \dot{x}_i} \frac{\partial \dot{x}_i}{\partial \dot{q}_j} \right) + \frac{\partial V}{\partial t} \frac{\partial t}{\partial \dot{q}_j} = \sum_{i=1}^N \frac{\partial x_i}{\partial q_j} \frac{\partial V}{\partial \dot{x}_i} \qquad \text{(d)}
$$となる。ただし、(d)式においては、2つ目の等号は\(x_i\)は\(\boldsymbol{q}\)と時間\(t\)の関数であって\(\dot{\boldsymbol{q}}\)を引数に含まないことと(a)式を用いている。(d)式の両辺を時間微分すると、
$$
\frac{d}{dt} \left(\frac{\partial V}{\partial \dot{q}_j}\right) = \sum_{i=1}^N \left[ \frac{d}{dt} \left(\frac{\partial x_i}{\partial q_j}\right) \frac{\partial V}{\partial \dot{x}_i} + \frac{\partial x_i}{\partial q_j} \frac{d}{dt}\left(\frac{\partial V}{\partial \dot{x}_i}\right) \right] = \sum_{i=1}^N \left[ \frac{\partial \dot{x}_i}{\partial q_j} \frac{\partial V}{\partial \dot{x}_i} + \frac{\partial x_i}{\partial q_j} \frac{d}{dt}\left(\frac{\partial V}{\partial \dot{x}_i}\right) \right] \qquad \text{(e)}
$$となる。ただし、2つ目の等号は(b)式を用いている。ここで、(c)式と(e)式の和をとると、
$$
-\frac{\partial V}{\partial q_\alpha} + \frac{d}{dt}\left(\frac{\partial V}{\partial \dot{q}_\alpha}\right) = \sum_{i=1}^N \left( -\frac{\partial V}{\partial x_i} + \frac{d}{dt}\left(\frac{\partial V}{\partial \dot{x}_i}\right) \right) \frac{\partial x_i}{\partial q_\alpha} \qquad \text{(f)}
$$となっている。さて、式(a),(b),(c),(d),(e),(f)を与えたので証明に入る。
ニュートンの運動方程式の両辺に\(\frac{\partial x_i}{\partial q_j}\)を掛け、すべての成分\(i\)について足し合わせると、
$$
\sum_{i=1}^N m_i \ddot{x}_i \frac{\partial x_i}{\partial q_j} = \sum_{i=1}^N F_i \frac{\partial x_i}{\partial q_j} \qquad \text{(g)}
$$となるが、(g)式の左辺について、運動エネルギー\(K\)を用いた形に変形すると、
$$
\text{左辺} = \sum_{i=1}^N \left[ \frac{d}{dt}\left( m_i \dot{x}_i \frac{\partial x_i}{\partial q_j} \right) – m_i \dot{x}_i \frac{d}{dt}\left( \frac{\partial x_i}{\partial q_j} \right) \right] = \sum_{i=1}^N \left[ \frac{d}{dt}\left( m_i \dot{x}_i \frac{\partial \dot{x}_i}{\partial \dot{q}_j} \right) – m_i \dot{x}_i \frac{\partial \dot{x}_i}{\partial q_j} \right] = \frac{d}{dt} \left( \frac{\partial K}{\partial \dot{q}_j} \right) – \frac{\partial K}{\partial q_j}
$$となる。ただし、1つ目の等号は積の微分公式、2つ目の等号は(a)式と(b)式、3つ目の等号は定理2.2.3の前提で与えた運動エネルギー\(K\)の表式をそれぞれ用いている。また、(g)式の右辺について、ポテンシャル\(V\)を用いた形に変形すると、(f)式を用いて、
$$
\text{右辺} = -\frac{\partial V}{\partial q_\alpha} + \frac{d}{dt}\left(\frac{\partial V}{\partial \dot{q}_\alpha}\right)
$$となる。以上の両辺の変形を(g)式に代入すると、
$$
\frac{d}{dt} \left( \frac{\partial K}{\partial \dot{q}_j} \right) – \frac{\partial K}{\partial q_j} = \frac{d}{dt}\left(\frac{\partial V}{\partial \dot{q}_j}\right) – \frac{\partial V}{\partial q_j}
$$であるから、\(L(\boldsymbol{q}, \dot{\boldsymbol{q}}, t) = K – V\)に対して、
$$
\frac{d}{dt} \left( \frac{\partial L}{\partial \dot{q}_j} \right) – \frac{\partial L}{\partial q_j} = 0
$$より、一般化座標においてオイラー=ラグランジュ方程式が成り立つ。
別稿で確認したように、ラグランジアンは実用的には現実に選んだ経路において\(\int_{t_i}^{t_f} L(\boldsymbol{q}, \dot{\boldsymbol{q}}, t) dt\)が停留するような量、すなわち、一般化座標においてオイラー=ラグランジュ方程式を成り立たせる量であればよいため、以上より、\(L(\boldsymbol{q}, \dot{\boldsymbol{q}}, t) = K – V\)はたしかにこの系のラグランジアンとして採用できる。□
以上、拘束がないときの各力学モデルにおけるラグランジアンの表式になります。拘束がある場合について、あるいは前の段落で証明した定理を各力学モデルのもとで適用した結果などは、それぞれ別稿で証明しています。
>>古典力学におけるラグランジアン
多質点系のラグランジュ力学
さらに、ここまでは質点の力学しか扱っていませんが、実際の工学などの場面では多数の質点からなる連続した”多質点系”の力学を考えなければなりません。多数の質点からなるがそれらの間の距離が常に一定のため有限自由度の”剛体”の力学、空間内に連続的に分布した無限の質点が独立に動けるため無限自由度の”連続体”の力学については別稿で扱っています。
>>剛体のラグランジアン
>>連続体のラグランジアン
ハミルトン力学
ハミルトン力学の構造
ラグランジュ力学が「始点から終点までの最適なルート探し」という大局的な視点を持つのに対して、ハミルトン力学は「現在の状態から次の瞬間にどう状態が変化するか」という時間発展的な視点を持っています。なお、ラグランジュ力学とハミルトン力学は、力学を記述する枠組みとして原則として互いに等価であり、数学的な変換を通じて自由に行き来することができます。つまりラグランジュ力学とハミルトン力学は実質的には同じことを、言い方を変えて述べているだけということですが、それなのにどちらも学ぶ対象として生き残っている理由は明らかで、相性がいい分野がそれぞれ違うからです。分野によって最適な見方をする体系を使っているということですね。
ここで、一般化運動量とハミルトニアンという物理量を先に定義しておきます。
定義B.1(一般化運動量の定義)
力学系の一般化座標を\(\boldsymbol{q}=(q_1,q_2,…,q_N)\)としたとき、力学系に対応してラグランジアン\(L(\boldsymbol{q}, \dot{\boldsymbol{q}}, t)\)が定まるならば、\(\frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i}\)を一般化運動量\(p_i\)と定義する。
定義B.2(ハミルトニアンの定義)
力学系の一般化座標を\(\boldsymbol{q}=(q_1,q_2,…,q_N)\)としたとき、力学系に対応してラグランジアン\(L(\boldsymbol{q}, \dot{\boldsymbol{q}}, t)\)が定まるならば、定義2.3にしたがって一般化運動量\(\boldsymbol{p}=(p_1,p_2,…,p_N)\)を定義できる。このとき、以下のように定義した物理量\(H(\boldsymbol{q}, \boldsymbol{p}, t)\)をハミルトニアンという。
$$
H(\boldsymbol{q}, \boldsymbol{p}, t) = \sum_{i=1}^N p_i \dot{q}_i(\boldsymbol{q}, \boldsymbol{p}, t) – L(\boldsymbol{q}, \dot{\boldsymbol{q}}(\boldsymbol{q}, \boldsymbol{p}, t), t)
$$
さて、ハミルトン力学で原理とするのは以下のことです。
原理B.3(正準方程式)
力学系の一般化座標を\(\boldsymbol{q}=(q_1,q_2,…,q_N)\)、力学系の一般化運動量を\(\boldsymbol{p}=(p_1,p_2,…,p_N)\)としたとき、力学系に対応してハミルトニアンを\(H(\boldsymbol{q}, \boldsymbol{p},t)\)が定まるならば、\(i=1,2,…,N\)に対して以下が成り立つ。
$$
\frac{\partial H}{\partial q_i} = – \dot{p}_i \qquad
\frac{\partial H}{\partial p_i} = \dot{q}_i
$$
さて、ハミルトン力学について、ここから成り立つこと、導かれることは大量にあります。これらについてはそれぞれ別の稿で紹介していきます。
>>ハミルトニアンと一般化運動量
>>位相空間
多質点系のハミルトン力学

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