こんにちは、turtleです。現在力学を学んでおりまして、その備忘録のような形でこのブログを書かせていただいております。基本的に大学の内容となっていますが、数式さえ乗り越えれば高校生でも理解できると思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。
さて、いままでの稿では質点の力学をラグランジアンを用いて再構成してきましたが、これは物体の大きさを無視するという仮定を前提にしている一方で、現実に多数の質点からなる”物体”を考えるときはその大きさが無視できないときもしばしばあります。ここでは、このような大きさの無視できない多質点系の力学について考えていきますが、物体を構成する粒子1つ1つに対して力学を計算するというのはどうにも現実的ではありません。
そこで、原子や分子をすべて計算し尽くすことは不可能であるので、代わりに、現実の物質をよく説明するモデルを考えます。先に言ってしまうと、よく用いられるのは、
多数の質点からなるが、それらの間の距離が常に一定であって変形しない剛体というモデル
原子や分子といった離散的な集合を平均化した、空間内に質点が連続的に分布する連続体というモデル
です。本稿では、前者の剛体というモデルを考えて、別の稿で後者の連続体のモデルを扱います。
剛体のラグランジアン
さて、先に述べたように、”剛体”というのは多数の質点からなるが、それらの間の距離が常に一定であって変形しないというモデルでした。これは、\(N(\to \infty)\)個の質点からなる、\(3N\)個の変数で記述された多質点系に、「任意の2質点\(m_k\), \(m_l\)間の距離が常に一定」という拘束条件
$$
G_{kl}(\boldsymbol{r}_1, \dots, \boldsymbol{r}_N) = (x_k – x_l)^2 + (y_k – y_l)^2 + (z_k – z_l)^2 – l_{kl}^2 = 0
$$を課したものとみることができ、こうみることでこの稿の議論を拝借して、話を進めることができます。
定理2.2.A
多数の質点からなり、それらの間の距離が常に一定であって変形しないという剛体のモデルにおいて、ラグランジアン\(L\)が定まるとすると、これは独立な6つの変数\(\boldsymbol{q}=(q_1, q_2, \dots, q_6)\)を用いて\(\tilde{L}(\boldsymbol{q}, \dot{\boldsymbol{q}},t)\)と書き換えることができ、このとき\(i=1,2,…,6\)に対して以下が成り立つ。
$$
\frac{\partial \tilde{L}}{\partial q_i} – \frac{d}{dt} \frac{\partial \tilde{L}}{\partial \dot{q}_i} = 0
$$
定理2.2.Aの証明
剛体を\(N(\to \infty)\)個の微小な質点からなる多質点系とみなし、その力学系の一般化座標として計\(3N\)個の直交座標\((x_1, y_1, z_1, \dots, x_N, y_N, z_N)\)を選んだとき、この系に対応してラグランジアン\(L(\boldsymbol{r}_1,…,\boldsymbol{r}_N, \dot{\boldsymbol{r}}_1,…, \dot{\boldsymbol{r}}_N, t)\)が定まるとする。
ここで、剛体のモデルは拘束条件として「任意の2質点\(m_k\), \(m_l\)間の距離が常に一定」という条件
$$
G_{kl}(\boldsymbol{r}_1, \dots, \boldsymbol{r}_N) = (x_k – x_l)^2 + (y_k – y_l)^2 + (z_k – z_l)^2 – l_{kl}^2 = 0
$$を要求する。この式は\(N\)文字から2文字を選ぶ組み合わせだけ、すなわち\(N(N-1)/2\)本だけ存在するが、このうち独立なものは\(3N – 6\)本にすぎない。これは、質点を順に置いて剛体を組み立てることを考えると、1つ目の質点\(m_1\)は自由に置けるため0本の拘束条件を用いて、2つ目の質点\(m_2\)は\(m_1\)との距離が制限されているため1本の拘束条件を用いて、3つ目の質点は\(m_3\)は\(m_1\)と\(m_2\)との距離が制限されているため2本の拘束条件を用いて置くことになるが、それ以降の質点はそれぞれ\(m_1,m_2,m_3\)との距離の3本の拘束条件だけで位置が一意に定まり、他の点との距離は幾何学的に自動で決まる従属な条件になるためである。
さて、定理2.2.6より、拘束条件として\(3N-6\)本の式\(\tilde{G}_j(\boldsymbol{q}, t)=0 \quad (j=1,2,…,3N-6)\)を要求するとき、力学系の一般化座標のうち拘束条件を解いて残る独立な\(3N-(3N-6)=6\)変数を\(\boldsymbol{q}=(q_1, q_2, \dots, q_6)\)とすると、この6変数以外の変数を消去したラグランジアン\(\tilde{L}(\boldsymbol{q}, \dot{\boldsymbol{q}},t) = L((\boldsymbol{r}_i(\boldsymbol{q},t), \dot{\boldsymbol{r}}_i(\boldsymbol{q},\dot{\boldsymbol{q}},t), t)\)に対して、
$$
\frac{\partial \tilde{L}}{\partial q_i} – \frac{d}{dt} \frac{\partial \tilde{L}}{\partial \dot{q}_i} = 0 \qquad (i=1,2,…,6)
$$を解いて求めた運動は、ニュートンの運動方程式に従う物理的に正しい運動であることが示されているため、以上より示された。□
このときの独立な6つの変数の選び方を考えましょう。要は、剛体についてこれらの変数の値がわかれば、あとは拘束条件から剛体の配置が完全にわかるような6つの変数を考えよう、ということです。
1つの選び方としては、ある3つの質点の位置を\(\boldsymbol{r}_1=(x_1,y_1,z_1)\), \(\boldsymbol{r}_2=(x_2,y_2,z_2)\), \(\boldsymbol{r}_3=(x_3,y_3,z_3)\)としたとき、\( (x_1,y_1,z_1,x_2,y_2,x_3) \)の6変数というものがあります。というのは、\(\boldsymbol{r}_1=(x_1,y_1,z_1)\)の位置と、\(\boldsymbol{r}_2\)の\(x\)座標および\(y\)座標を決めれば、\(\boldsymbol{r}_1\)と\(\boldsymbol{r}_2\)の距離を指定する拘束条件によって\(z_2\)の値を、さらに\(\boldsymbol{r}_3\)の\(x\)座標を決めれば、\(\boldsymbol{r}_1\)と\(\boldsymbol{r}_3\)の距離を指定する拘束条件および、\(\boldsymbol{r}_2\)と\(\boldsymbol{r}_3\)の距離を指定する拘束条件によって\(y_3, z_3\)の値を決めることができ、あとの剛体中の任意の位置は拘束条件から直ちに決められるからです。
他にもいろいろな選び方がありますが、一般に用いられるのは、重心の座標\((x_G,y_G,z_G)\)と、剛体に固定された座標系の姿勢を表す角度\((\phi, \theta, \psi)\)の6変数です。これもまた、重心の座標と重心に固定された座標系の姿勢がそれぞれ完全に決まれば、剛体中の任意の位置が拘束条件から直ちに決められるのは想像に難くないでしょう。
続いて、ラグランジアンの表式として以下のことが成り立ちます。定理2.2.7から連続極限をとると直ちに得られるので、証明は同様とします。
定理2.2.B
剛体の体積を\(\mathcal{V}\)、剛体に固定された座標系による位置\(\boldsymbol{s}\)における質量密度を\(\rho(\boldsymbol{s})\)、剛体内の各微小体積要素の空間に固定された座標系による位置を\(\boldsymbol{r}(\boldsymbol{s}, t)\)としたとき、任意の微小要素\(d \mathcal{V}\)に対してニュートンの運動方程式が\(\rho(\boldsymbol{s}) \ddot{\boldsymbol{r}}(\boldsymbol{s}, t) d\mathcal{V} = \boldsymbol{f}(\boldsymbol{s}, t) dV + \boldsymbol{r}_c(\boldsymbol{s}, t) d\mathcal{V}\)とかけるとする。ただし、\(\boldsymbol{f}(\boldsymbol{s}, t)\)は、
$$
\boldsymbol{f}(\boldsymbol{s}, t) = -\nabla_{\boldsymbol{r}} v + \frac{d}{dt} \nabla_{\dot{\boldsymbol{r}}} v
$$なるスカラー密度量\(v(\boldsymbol{r}, \dot{\boldsymbol{r}}, t)\)が存在するという条件を満たす外力密度であって、\(\boldsymbol{r}_c\)は剛体の形状を維持するための拘束力密度である。このとき、
$$
K=\int_\mathcal{V} \left\{ \frac{1}{2} \rho(\boldsymbol{s}) |\dot{\boldsymbol{r}}(\boldsymbol{s}, t)|^2 \right\} d\mathcal{V} \qquad
V=\int_\mathcal{V} v(\boldsymbol{r}(\boldsymbol{s}, t), \dot{\boldsymbol{r}}(\boldsymbol{s}, t), t) d\mathcal{V}
$$とすると、定理2.2.Aを満たすラグランジアンとして、\(\boldsymbol{r}, \dot{\boldsymbol{r}}\)を\(\boldsymbol{q}, \dot{\boldsymbol{q}}\)で表した以下を採用できる。
$$
\tilde{L}(\boldsymbol{q}, \dot{\boldsymbol{q}},t)=K(\boldsymbol{q}, \dot{\boldsymbol{q}},t)-V(\boldsymbol{q}, \dot{\boldsymbol{q}},t)
$$
ここまで、拘束のある多質点系として剛体を議論することで、剛体のラグランジアンとして実際に何を採用できるのか、剛体のオイラー=ラグランジュ方程式はどういう形をとるのか整理されてきたかと思います。さて、ここから実際に具体的な剛体の条件を与えられたときにどのように方程式を立てて、どのように問題を解くかは、別稿で扱います。
独立な6変数として\((x_G,y_G,z_G,\phi, \theta, \psi)\)を用いるときに、剛体に固定された座標系として何を選ぶか、角度\((\phi, \theta, \psi)\)はどのように定義されているかなども、これらの稿で実際に問題を解きながら考えていますよ。
>>自由な剛体の運動

コメント