こんにちは、turtleです。現在電磁気学を学んでおりまして、その備忘録のような形でこのブログを書かせていただいております。基本的に大学の内容となっていますが、数式さえ乗り越えれば高校生でも理解できると思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。
このページは管理人の習熟度に応じて書き足していく予定です。
電磁気学の歴史的経緯
自然界には電磁気力・重力・強い力・弱い力の4種類の力しかないことが知られていますが、電磁気学はこの1つ「電磁気力」を扱う学問です。物理学の理論においては、「何を自明なルール、すなわち原理と認め、そこから何が定理として導かれるか」という論理構造が非常に重要であり、電磁気学においてはこの構造が歴史的に何度も見直されてきました。
1785年~1820年頃が電磁気学の黎明期です。クーロンやアンペール、ビオ、サバールらによって、実験による法則の発見がなされ、クーロンの法則やビオサバールの法則、および重ね合わせの原理といった、電荷や電流が離れた場所に直接力を及ぼす「遠隔作用」を説明する法則が、証明できない原理として扱われます。
1831年~1850年代頃、ここでファラデーによる電磁誘導の法則など、電荷や電流が時間変化したときに生じる新しい物理現象が発見されます。これらはクーロンの法則やビオサバールの法則の適用外であったため、これらを説明するためにマクスウェルによって方程式系がつくられ、これをヘヴィサイドが4つのベクトル方程式に整理しました。ここでついに古典論が完成を迎えます。
古典論では物理的実体は「力」から「場」へと移行し、局所的な微分方程式であるマクスウェル方程式およびローレンツ力の式が原理として扱われ、電磁気力は電磁場の歪みとして説明されます(遠隔作用に対して近接作用と呼びます)。クーロンの法則やビオサバールの法則はここから導かれる定理となりました。
これ以降は管理人の学習が追いつき次第加筆します。相対論の導入によりマクスウェル方程式は定理となり、物理的実体は「電場と磁場」から、これまで数学的道具として扱っていた「スカラーポテンシャルおよびベクトルポテンシャル」に移行します。
クーロンの法則やビオサバールの法則の発見
本稿では、歴史的経緯に沿った各段階で、何が原理として扱われてそこから何が定理として導かれるのかを見ていきます。まず、1785年~1820年頃、電磁気学の黎明期においては、クーロンやアンペール、ビオ、サバールらによって、実験による法則の発見がなされ、クーロンの法則やビオサバールの法則、および重ね合わせの原理といった、電荷や電流が離れた場所に直接力を及ぼす「遠隔作用」を説明する法則が、証明できない原理として扱われました。
原理1.1(クーロンの法則)
距離\(R\)離れた2つの点電荷\(q_1\),\(q_2\)の間にはたらく力\(\boldsymbol{f}\)は、大きさが
$$
f=\frac{|q_1q_2|}{4\pi\epsilon_0 R^2}
$$であって、お互いを結ぶ直線方向に、\(q_1\)と\(q_2\)が同符号なら引力、異符号なら斥力として現れる。ただし\(\epsilon_0\)は真空の誘電率である。
原理1.2(静電場における重ね合わせの原理)
3つの電荷\(q\),\(q_1\),\(q_2\)が存在するときに\(q\)のうける電気的な力は、\(q\),\(q_1\)のみが存在するとき\(q\)が\(q_1\)から受ける力と、\(q\),\(q_2\)のみが存在するとき\(q\)が\(q_2\)から受ける力のベクトル和である。
原理1.3(ビオサバールの法則)
距離\(R\)離れた位置にある2つの電流素片\(I_1 \Delta \boldsymbol{s}_1\)、\(I_2 \Delta \boldsymbol{s}_2\)の間に、\(I_1 \Delta \boldsymbol{s}_1\)が作る磁場によって\(I_2 \Delta \boldsymbol{s}_2\)にはたらく力\(\Delta \boldsymbol{f}\)は、
$$
\Delta \boldsymbol{f} = \frac{\mu_0}{4\pi R^2} I_2 \Delta \boldsymbol{s}_2 \times (I_1 \Delta \boldsymbol{s}_1 \times \boldsymbol{n})
$$
である(電流\(I_2\)の向きと、\(I_1\)がその場所に作る磁場の向きの双方に対して垂直方向となる)。ただし\(\mu_0\)は真空の透磁率、\(\boldsymbol{n}\)は\(1\)から\(2\)へ向かう単位ベクトルである。
原理1.4(静磁場における重ね合わせの原理)
3つの電流素片\(I\)、\(I_1\)、\(I_2\)が存在するときに\(I\)のうける磁気的な力は、\(I\)、\(I_1\)のみが存在するとき\(I\)が\(I_1\)から受ける力と、\(I\)、\(I_2\)のみが存在するとき\(I\)が\(I_2\)から受ける力のベクトル和である。
先に説明したように、これらの法則を原理として扱うことは現代の物理学では本質的ではありません、というのは、これらではこのあとの時代の電磁気学で確認される様々な実験結果のすべてを説明することはできないからです。こういうときに物理学では、まだ見つかっていないがより本質的な何らかの原理が存在し、いまわかっているものは特定の条件を課したときその原理から導かれる定理にすぎないはずだという見方をしますね。
このあとマクスウェルの方程式が体系化されますが、実はクーロンの法則、ビオサバールの法則、重ね合わせの原理は、電荷分布および電流分布が時間変化しない条件下でのマクスウェル方程式、およびローレンツ力の式と等価になるのです。
場の導入とマクスウェル方程式の体系化
1831年~1850年代頃、ここでファラデーによる電磁誘導の法則など、電荷や電流が時間変化したときに生じる新しい物理現象が発見されます。これらはクーロンの法則やビオサバールの法則の適用外であったため、これらを説明するためにマクスウェルによって方程式系がつくられ、これをヘヴィサイドが4つのベクトル方程式に整理しました。ここでついに古典論が完成を迎えます。
場の導入
ここで、古典論では物理的実体は「力」から「場」へと移行します。つまり、空間そのものが物理的な性質を持つとみなされるようになったということです。
これまでの理論では何もない空間を力が瞬時に飛び越えているとしていたのに対して、これが直観に反しているとファラデーらは疑問視し、電荷や電流は周りの空間の性質を変化させ、それが他の電荷や電流に伝えているのだという主張がなされました。これは数学的に次のように整理されます。
定義2.1(電場の定義)
静止した電荷分布に対して、この空間のある位置\(\boldsymbol{r}\)に単位電荷をおいたとき、単位電荷の受ける力\(\boldsymbol{f}\)を、その位置\(\boldsymbol{r}\)における静電場\(\boldsymbol{E}(\boldsymbol{r})\)と定義する。
定義2.2(磁場の定義)
静止した電流分布に対して、この空間のある位置\(\boldsymbol{r}\)を速度\(\boldsymbol{v}\)で運動する単位電荷をおいたとき、単位電荷の受ける力\(\boldsymbol{f}\)が\(\boldsymbol{f} = \boldsymbol{v} \times \boldsymbol{B}(\boldsymbol{r})\)となるようなベクトル\(\boldsymbol{B}(\boldsymbol{r})\)を、その位置\(\boldsymbol{r}\)における静磁場と定義する。
ここから導かれる系として、ローレンツ力と呼ぶ電荷にはたらく力は次のように説明されます。この段階ではこれは定義、あるいは証明できない原理として認めます。
系2.3(ローレンツ力の式)
電場\(\boldsymbol{E}\)および磁場\(\boldsymbol{B}\)が存在する空間において、速度\(\boldsymbol{v}\)で運動する電荷\(q\)が受ける力\(\boldsymbol{F}\)は、電気的な力と磁気的な力のベクトル和として、以下で与えられる。
$$
\boldsymbol{F} = q(\boldsymbol{E} + \boldsymbol{v} \times \boldsymbol{B})
$$
マクスウェル方程式の体系化
あとは電荷分布および電流分布が電磁場をどのようにつくるか、これさえわかれば理論としては完成しますが、これはマクスウェル方程式によって説明されます。相対論や量子論のようなケースを除けば、一般の現象はすべてマクスウェル方程式とローレンツ力の式から出発して説明できるため、これが古典電磁気学における原理となっています。
原理2.4(マクスウェル方程式)
電場\(\boldsymbol{E}\)、磁場\(\boldsymbol{B}\)、電荷密度\(\rho\)、電流密度\(\boldsymbol{j}\)の間に成り立つ、以下の4つの基礎方程式をマクスウェル方程式と呼ぶ。
$$
\nabla \cdot \boldsymbol{E} = \frac{\rho}{\epsilon_0}
$$$$
\nabla \cdot \boldsymbol{B} = 0
$$$$
\nabla \times \boldsymbol{E} = -\frac{\partial \boldsymbol{B}}{\partial t}
$$$$
\nabla \times \boldsymbol{B} = \mu_0 \boldsymbol{j} + \mu_0 \epsilon_0 \frac{\partial \boldsymbol{E}}{\partial t}
$$ただし、\(\epsilon_0\)は真空の誘電率、\(\mu_0\)は真空の透磁率である。
第1式は電場におけるガウスの法則、第2式は磁場におけるガウスの法則、第3式はファラデーの電磁誘導の法則、第4式はアンペール・マクスウェルの法則と呼ばれています。第1式は電場の発散、第2式は磁場の発散、第3式は電場の回転、第4式は磁場の回転について、それぞれが何によって定まるかを記述する、電場と磁場について対称性の高い方程式系となっていることが分かります。
マクスウェル方程式について、ここから成り立つこと、導かれることは大量にあります。これらについてはそれぞれ別の稿で紹介していきます。
>>電荷の保存則
>>時間変化しないマクスウェル方程式と、クーロンの法則、ビオサバールの法則の等価性
>>電磁波
>>電磁場のエネルギーとその保存
ポテンシャルの導入
先にマクスウェル方程式を紹介しましたが、これは実はマクスウェルによってつくられた方程式系をヘヴィサイドが4つのベクトル方程式に整理したもので、もとのマクスウェル方程式はこのような対称性の高い形で書かれてはいませんでした、というのも、もとのマクスウェルの方程式系にはスカラーポテンシャル\(\phi\)やベクトルポテンシャル\(\boldsymbol{A}\)といった物理量が登場しているのです。このポテンシャルは次の相対論の段階で主役になるものでもあるので、いったんここで数学的道具として導入しておきます。
数学のベクトル解析の定理の一つである>>ポアンカレの補題を利用します。
定理2.5
電場\(\boldsymbol{E}\)、磁場\(\boldsymbol{B}\)について、
$$
\boldsymbol{E} = -\nabla \phi – \frac{\partial \boldsymbol{A}}{\partial t}
$$$$
\boldsymbol{B} = \nabla \times \boldsymbol{A}
$$なるスカラー場\(\phi\)とベクトル場\(\boldsymbol{A}\)が必ず存在する。
定理2.5の証明
ポアンカレの補題より、\(\boldsymbol{R}^3\)全体で定義された3次元のベクトル場\(\boldsymbol{F}\)において、\(\nabla \times \boldsymbol{F}=0\)ならば、\(\boldsymbol{F}=\nabla \psi\)なる\(\boldsymbol{R}^3\)上のスカラーポテンシャル\(\psi\)が存在する。
また、\(\boldsymbol{R}^3\)全体で定義された3次元のベクトル場\(\boldsymbol{G}\)において、\(\nabla \cdot \boldsymbol{G}=0\)ならば、\(\boldsymbol{G}=\nabla \times \boldsymbol{A}\)なる\(\boldsymbol{R}^3\)上のベクトルポテンシャル\(\boldsymbol{A}\)が必ず存在する。
したがって、まずマクスウェル方程式の第2式\(\nabla \cdot \boldsymbol{B} = 0\)とポアンカレの補題より、\(\boldsymbol{B} = \nabla \times \boldsymbol{A}\)なるベクトル場\(\boldsymbol{A}\)が存在する。
次に、\(\boldsymbol{B} = \nabla \times \boldsymbol{A}\)をマクスウェル方程式の第3式\(\nabla \times \boldsymbol{E} = -\frac{\partial \boldsymbol{B}}{\partial t}\)に代入して変形すると、
$$
\nabla \times \left( \boldsymbol{E} + \frac{\partial \boldsymbol{A}}{\partial t} \right) = 0
$$となる。ポアンカレの補題より、
$$
\left( \boldsymbol{E}+ \frac{\partial \boldsymbol{A}}{\partial t} \right) = -\nabla \phi
$$なるスカラー場\(\phi\)が存在するので示された。□
定義2.6(スカラーポテンシャル、ベクトルポテンシャルの導入)
定理2.5におけるスカラー場\(\phi\)とベクトル場\(\boldsymbol{A}\)を、それぞれスカラーポテンシャル、ベクトルポテンシャルと定義する。
相対論の導入
これ以降は、管理人の習熟度に応じて書き足していく予定です。

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