静磁場におけるポアソンの方程式

こんにちは、turtleです。現在電磁気学を学んでおりまして、その備忘録のような形でこのブログを書かせていただいております。基本的に大学の内容となっていますが、数式さえ乗り越えれば高校生でも理解できると思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。

親記事において、電流分布からベクトルポテンシャル\(\boldsymbol{A}\)を求める2階偏微分方程式である、静磁場におけるポアソン方程式を紹介しました。
これを使って磁場を求めるのがマクスウェル方程式で直接、電流分布から磁場を求めるのに比べて簡単であるのは、方程式の絡まりが解けるためでしたね。
というのは、マクスウェル方程式の第4式は、直交座標系における成分での分解をすると、
$$
\begin{cases}
\frac{\partial B_z}{\partial y} – \frac{\partial B_y}{\partial z} = \mu_0 j_x \\
\frac{\partial B_x}{\partial z} – \frac{\partial B_z}{\partial x} = \mu_0 j_y \\
\frac{\partial B_y}{\partial x} – \frac{\partial B_x}{\partial y} = \mu_0 j_z
\end{cases}
$$となり、\(B_x,B_y,B_z\)の連立方程式となっている一方で、ポアソン方程式は、直交座標系における成分での分解をすると、
$$
\begin{cases}
\nabla^2 A_x = -\mu_0 j_x \\
\nabla^2 A_y = -\mu_0 j_y \\
\nabla^2 A_z = -\mu_0 j_z
\end{cases}
$$のように、成分ごとに独立した3つのスカラーポアソン方程式に帰着するのでした。これにより、各成分\(A_x, A_y, A_z\)は、他成分と連成せず、対応する電流密度成分\(j_x, j_y, j_z\)のみによって決定されるため、比較的計算が楽になるということです。
本稿では、この静磁場におけるポアソン方程式の性質やその解き方について説明していきます。

静磁場におけるポアソン方程式を再掲しておきます。

定理2.4.6(静磁場におけるポアソン方程式)
以下の2階偏微分方程式がつねに成立している。ただし、\(j(\boldsymbol{r})\)は各位置\(\boldsymbol{r}\)での電流密度、\(\boldsymbol{A}(\boldsymbol{r})\)は各位置\(\boldsymbol{r}\)でのベクトルポテンシャルを表す。なお、ベクトルポテンシャルはクーロンゲージ条件(\(\nabla \cdot \boldsymbol{A} = 0\))を満たすとする。
$$
\nabla^2 \boldsymbol{A}(\boldsymbol{r}) = -\mu_0 \boldsymbol{j}(\boldsymbol{r})
$$

先に見せたように、これは直交座標系の成分に分解すると、次のようになります。
$$
\begin{cases}
-\nabla^2 A_x = \mu_0 j_x \\
-\nabla^2 A_y = \mu_0 j_y \\
-\nabla^2 A_z = \mu_0 j_z
\end{cases}
$$
それぞれの式は、静電場のポアソン方程式\(- \nabla^2 \phi = \frac{\rho}{\epsilon_0}\)における、\(\phi\)を\(A_x,A_y,A_z\)に、\(\frac{1}{\epsilon_0}\)を\(\mu_0\)に、\(\rho\)を\(j_x,j_y,j_z\)に対応させたものであるため、この稿で行った議論を以上の対応関係に移した定理や系がすべて成立します。

領域\(V\)が有限であるときは(1)から(3)のような境界条件を、領域\(V\)が無限(縁がない全空間)であるときは(4)のような境界条件を与えます。

(1)ディリクレ条件:境界上のすべての場所での、ベクトルポテンシャル\(\boldsymbol{A}\)を与える条件
領域\(V\)の表面\(S\)上のある位置\(\boldsymbol{r}\)におけるベクトルポテンシャル\(\boldsymbol{A}\)の関数形\(\boldsymbol{f}(\boldsymbol{r})\)が与えられる条件です。

(2)ノイマン条件:境界上のすべての場所での、ベクトルポテンシャル\(\boldsymbol{A}\)の法線方向微分を与える条件
領域\(V\)の表面\(S\)上のある位置\(\boldsymbol{r}\)におけるベクトルポテンシャルの法線方向微分\(\frac{\partial \boldsymbol{A}}{\partial n}\)の関数形\(\boldsymbol{g}(\boldsymbol{r})\)が与えられる条件です。
このノイマン条件については、ベクトルポテンシャル\(\boldsymbol{A}\)には定ベクトル分のずれが残ります(\(\boldsymbol{A}\)が解であるとすると、定ベクトル\(\boldsymbol{\chi}\)に対して\(\boldsymbol{A}+\boldsymbol{\chi}\)も解になります)。物理的には磁場のみが意味を持つのでこれで問題ないですが、ベクトルポテンシャル\(\boldsymbol{A}\)の関数形まで確定させたい場合には、領域\(V\)中のあるどこか1点\(\boldsymbol{r}_0\)でのベクトルポテンシャルの値\(\boldsymbol{A}(\boldsymbol{r}_0)\)を与える必要があります。

(3)混合境界条件:境界の一部ではベクトルポテンシャル\(\boldsymbol{A}\)を、残りの部分ではベクトルポテンシャル\(\boldsymbol{A}\)の法線方向微分を与える条件
境界\(S\)を2つの部分\(S_1\)と\(S_2\)に分け、\(S_1\)上では\(\boldsymbol{A}\)の関数形が、\(S_2\)上では \(\frac{\partial \boldsymbol{A}}{\partial n}\)の関数形が与えられる条件です。

(4)無限遠での条件:無限遠でベクトルポテンシャル\(\boldsymbol{A}\)が漸近する関数形を与える条件
\(|\boldsymbol{r}| \to \infty\)で\(\boldsymbol{A}(\boldsymbol{r}) \to \boldsymbol{A}_{\text{ext}}(\boldsymbol{r})\)なる関数形\(\boldsymbol{A}_{\text{ext}}(\boldsymbol{r})\)を与える条件です(例えば、電流がある有限の領域に集まっているときは、無限遠でのベクトルポテンシャルは\(\boldsymbol{0}\)に収束します)。

これらの条件(1)から(4)については、この稿で行った議論をもとにすると、それぞれベクトルポテンシャル\(\boldsymbol{A}\)の解が一意に定まります。つまり、領域\(V\)内での静磁場\(\boldsymbol{B}\)やベクトルポテンシャル\(\boldsymbol{A}\)の表式を解析的に求めるために必要なものは、その領域\(V\)内における電流分布\(\boldsymbol{j}\)と、(1)から(4)のうちのどれかの境界条件のみであることが分かりました。
さらに解の一意性から、次のことも直ちにいえますね。

系2.4.6.1
領域\(V\)の外側の電流分布がどのようであろうと、境界条件と領域\(V\)内の電流分布さえ等しいならば、領域\(V\)内の静磁場\(\boldsymbol{B}\)は等しい。

この系2.4.6.1は鏡像法など、静磁場を実際に求めるときに使う方法の裏付けとなっています。では、ここからは全空間におけるポアソン方程式の解析的な解を紹介します。

定理2.4.6.2
各位置\(\boldsymbol{r}\)での電流密度\(j(\boldsymbol{r})\)が与えられたとする。領域が磁化の生じない自由空間であり、無限遠で\(\boldsymbol{A}(\boldsymbol{r})=\boldsymbol{0}\)であるとしたとき、ポアソンの方程式の解はただ一つで、以下で与えられる。
$$
\boldsymbol{A}(\boldsymbol{r})=\displaystyle \int_{V’} \frac{\mu_0}{4\pi} \frac{\boldsymbol{j}(\boldsymbol{r’})dV’}{|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r’}|}
$$

定理2.4.6.2の証明

各成分のポアソン方程式
$$
\begin{cases}
-\nabla^2 A_x = \mu_0 j_x \\
-\nabla^2 A_y = \mu_0 j_y \\
-\nabla^2 A_z = \mu_0 j_z
\end{cases}
$$の解は、定理2.4.5.9で与えた解をそれぞれ\(- \nabla^2 \phi = \frac{\rho}{\epsilon_0}\)における、\(\phi\)を\(A_x,A_y,A_z\)に、\(\frac{1}{\epsilon_0}\)を\(\mu_0\)に、\(\rho\)を\(j_x,j_y,j_z\)に対応させたものであるから、
$$
A_x(\boldsymbol{r})=\displaystyle \int_{V’} \frac{\mu_0}{4\pi} \frac{j_x(\boldsymbol{r’})dV’}{|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r’}|}
$$$$
A_y(\boldsymbol{r})=\displaystyle \int_{V’} \frac{\mu_0}{4\pi} \frac{j_y(\boldsymbol{r’})dV’}{|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r’}|}
$$$$
A_z(\boldsymbol{r})=\displaystyle \int_{V’} \frac{\mu_0}{4\pi} \frac{j_z(\boldsymbol{r’})dV’}{|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r’}|}
$$これは、本定理で与えた解の各成分そのものであるから示された。

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