電荷の保存則

こんにちは、turtleです。現在電磁気学を学んでおりまして、その備忘録のような形でこのブログを書かせていただいております。基本的に大学の内容となっていますが、数式さえ乗り越えれば高校生でも理解できると思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。

電荷の保存則とは孤立した系(外部との電荷の出入りがない閉じた空間)の内部では、正電荷と負電荷の総量が時間によって変化しないという法則です。エネルギー保存則や運動量保存則と並ぶ物理学における重要な保存則で、物理で議論する電荷に関するすべての現象がこの法則の制約のもとに成り立っています。歴史的には、マクスウェルがアンペールの法則を理論的に修正して、方程式系の第4式であるアンペール・マクスウェルの法則を導く際に用いているので、マクスウェル方程式よりも先行して与えられていますが、一度マクスウェル方程式を原理とみなしてしまえば、電荷の保存則をそこから導出される定理として考えることもできますね。
本稿では、この電荷の保存則の数学的な記述を考えたあとで、これが実際にマクスウェル方程式の中に組み込まれていることを示します。

法則2.4.1(積分形の電荷の保存則)
数学的には以下のように記述する。ただし、\(\boldsymbol{j}(\boldsymbol{r})\)は各位置\(\boldsymbol{r}\)での電流密度を、\(\boldsymbol{n}(\boldsymbol{r})\)は閉曲面上の各位置\(\boldsymbol{r}\)での面を外向きに貫く大きさ1の法線ベクトルを、\(q\)は閉曲面内の電荷の総合計を表す。
$$
\displaystyle \int_S \boldsymbol{j} (\boldsymbol{r}) \cdot \boldsymbol{n}(\boldsymbol{r}) dS = -\frac{\partial q}{\partial t}
$$

電荷の保存則の数学的記述が法則2.4.1であることの証明

閉曲面\(S\)上の微小面\(\Delta S\)について、この微小面を通過する電流の合計の絶対値\(\Delta I\)は、\(\Delta S\)が微小面であるのでどこでも電流の向きは同じであるとみなすと、電流密度の定義より、
$$
\Delta I \simeq \text{|(微小面\(\Delta S\)における電流密度)×(\(\Delta S\)を貫く電流がすべて貫き、かつ電流に垂直な平面の面積)|}
$$とかける。

ここで、図2.4.1より、
$$
\text{(微小面\(\Delta S\)を貫く電流がすべて貫き、かつ電流に垂直な平面の面積)}=\text{\(\Delta S’\)の面積}=\Delta S \cos \theta
$$であるので、
$$
\Delta I \simeq j \Delta S \cos \theta = |\boldsymbol{j} \cdot \boldsymbol{n}| \Delta S
$$電流の大きさは単位時間あたりに通過する電荷量で定義されていることをふまえると、微小時間(\Delta t)において微小面\(\Delta S\)を通過する電荷の合計は、\(\Delta I \Delta t\)に等しいとみなせる。ここで、\(\Delta S\)が0に収束する極限を考えると、\(\Delta I\)を閉曲面\(S\)全体で足し合わせた結果は面積分の表式で与えられるので、微小時間\(\Delta t\)において閉曲面\(S\)から外側へ出ていく電荷の合計\(\Delta Q\)は、
$$
\Delta Q \simeq \left( \displaystyle \int_S \boldsymbol{j}(\boldsymbol{r}) \cdot \boldsymbol{n}(\boldsymbol{r}) dS \right) \Delta t
$$ここで、電荷の保存則の主張とは、孤立した系の内部で電荷の総量が時間変化しないというものであったことを思い出すと、微小時間\(\Delta t\)で閉曲面内の電荷の総合計が符号付きで\(\Delta q\)変化したとき、\(\Delta q+\Delta Q=0\)を満足している必要があるので、
$$
\Delta q+ \left( \displaystyle \int_S \boldsymbol{j}(\boldsymbol{r}) \cdot \boldsymbol{n}(\boldsymbol{r}) dS \right) \Delta t \simeq 0
$$両辺\(\Delta t\)で割ると、
$$
\displaystyle \int_S \boldsymbol{j}(\boldsymbol{r}) \cdot \boldsymbol{n}(\boldsymbol{r}) dS \simeq -\frac{\Delta q}{\Delta t}
$$\(\Delta t\)が0に収束する極限で、この式の等号は成立するので、
$$
\displaystyle \int_S \boldsymbol{j} (\boldsymbol{r}) \cdot \boldsymbol{n}(\boldsymbol{r}) dS = -\frac{\partial q}{\partial t}
$$これははじめに与えた表式であるので、これより示された。

物理学の理論が進んでいくにつれ、遠く離れた場所が直接作用しあうのではなく、隣へ隣へと作用が通じて伝わっていくという見方が、より正確な理解を助けることがわかってきました。このすぐ隣同士の局所的な因果関係を記述するものは、積分形に対して微分形と呼ばれることが多いです。
いま紹介した電荷の保存則の記述は、ある空間領域全体での電荷の総和が保存されることを主張したもので、これに対して局所的な位置で電荷の総和が保存されることを主張した記述は、微分形の電荷の保存則といいます。

法則2.4.2(微分形の電荷の保存則)
以下のように記述する。ただし、\(\boldsymbol{j}(\boldsymbol{r})\)は各位置\(\boldsymbol{r}\)での電流密度を、\(\rho(\boldsymbol{r})\)は各位置\(\boldsymbol{r}\)での電荷密度を表す。
$$
\nabla \cdot \boldsymbol{j}(\boldsymbol{r})=-\frac{\partial \rho(\boldsymbol{r})}{\partial t}
$$

法則2.4.1と法則2.4.2が等価であることの証明

ある閉曲面\(S\)をとり、その閉曲面内の空間領域を\(V\)とする。このとき、積分形の電荷の保存則より、
$$  
\displaystyle \int_S \boldsymbol{j} (\boldsymbol{r}) \cdot \boldsymbol{n}(\boldsymbol{r}) dS = -\frac{\partial q}{\partial t}
$$が成り立つ。ここで、左辺はガウスの発散定理より、
$$
\displaystyle \int_S \boldsymbol{j} (\boldsymbol{r}) \cdot \boldsymbol{n}(\boldsymbol{r}) dS = \displaystyle \int_V \nabla \cdot \boldsymbol{j} (\boldsymbol{r}) dV
$$と変形でき、右辺はある空間領域内での電荷の総合計は、その空間領域内で電荷密度を体積分した表式で与えられることから、
$$
q= \displaystyle \int_V \rho(\boldsymbol{r}) dV
$$と変形できるので、積分形の電荷の保存則は、
$$
\displaystyle \int_V \nabla \cdot \boldsymbol{j} (\boldsymbol{r}) dV = \displaystyle \int_V \frac{\partial \rho(\boldsymbol{r})}{\partial t} dV
$$と書き換えられることがわかる。いま、空間領域\(V\)は任意にとれるので、この関係がつねに成り立つには、
$$
\nabla \cdot \boldsymbol{j}(\boldsymbol{r})=-\frac{\partial \rho(\boldsymbol{r})}{\partial t}
$$でなくてはならない。よって、積分形と微分形の電荷の保存則は等価である。

以上、電荷の保存則の積分形および微分形の記述になります。

原理2.4(マクスウェル方程式)
電場\(\boldsymbol{E}\)、磁場\(\boldsymbol{B}\)、電荷密度\(\rho\)、電流密度\(\boldsymbol{j}\)の間に成り立つ、以下の4つの基礎方程式をマクスウェル方程式と呼ぶ。
$$
\nabla \cdot \boldsymbol{E} = \frac{\rho}{\epsilon_0}
$$$$
\nabla \cdot \boldsymbol{B} = 0
$$$$
\nabla \times \boldsymbol{E} = -\frac{\partial \boldsymbol{B}}{\partial t}
$$$$
\nabla \times \boldsymbol{B} = \mu_0 \boldsymbol{j} + \mu_0 \epsilon_0 \frac{\partial \boldsymbol{E}}{\partial t}
$$ただし、\(\epsilon_0\)は真空の誘電率、\(\mu_0\)は真空の透磁率である。

マクスウェルは方程式系を完成させるときに、もともとあったアンペールの法則を、電荷の保存則に矛盾しないように理論的に修正したことが知られています。こうしてつくられたマクスウェル方程式ですが、これを電磁気学の原理とみなしたとき、電荷の保存則をそこから導出される定理として考えることもできますね。以下、マクスウェル方程式から電荷の保存則を示す証明です。

原理2.4を仮定したときの法則2.4.2の証明

マクスウェル方程式を仮定すると、そこから電荷の保存則が導かれることを示す。
アンペール-マクスウェルの法則
$$
\nabla \times \boldsymbol{B} = \mu_0 \boldsymbol{j} + \mu_0 \epsilon_0 \frac{\partial \boldsymbol{E}}{\partial t}
$$
の両辺の発散をとると、左辺については、任意のベクトル場\(\boldsymbol{A}\)に対して、回転の発散は常にゼロであるというベクトル解析の恒等式\(\nabla \cdot (\nabla \times \boldsymbol{A}) = 0\)より、\(\nabla \cdot (\nabla \times \boldsymbol{B}) = 0\)となる。一方、右辺については、微分演算子の線形性と、空間微分と時間微分の順序交換が可能であることから、次のように変形できる。
$$
\nabla \cdot \left( \mu_0 \boldsymbol{j} + \mu_0 \epsilon_0 \frac{\partial \boldsymbol{E}}{\partial t} \right) = \mu_0 \nabla \cdot \boldsymbol{j} + \mu_0 \epsilon_0 \frac{\partial}{\partial t} (\nabla \cdot \boldsymbol{E})
$$
ここで、左辺がゼロであることから全体を\(\mu_0\)(\(\neq 0\))で割ると、
$$
\nabla \cdot \boldsymbol{j} + \epsilon_0 \frac{\partial}{\partial t} (\nabla \cdot \boldsymbol{E}) = 0
$$
となる。さらに、ガウスの法則\(\nabla \cdot \boldsymbol{E} = \frac{\rho}{\epsilon_0}\)を第2項に代入すると、定数\(\epsilon_0\)が約分され、最終的に以下の式が得られる。
$$
\nabla \cdot \boldsymbol{j} + \frac{\partial \rho}{\partial t} = 0
$$
この式は微分形の電荷の保存則そのものであるから、示された。

コメント

タイトルとURLをコピーしました