こんにちは、turtleです。現在電磁気学を学んでおりまして、その備忘録のような形でこのブログを書かせていただいております。基本的に大学の内容となっていますが、数式さえ乗り越えれば高校生でも理解できると思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。
さて、ビオサバールの法則について、この法則を電磁気学の原理として受け取るのは本質的ではない一方で、別稿において、クーロンの法則とビオサバールの法則を使って求めた静電場と静磁場は、時間変化しないマクスウェル方程式を使って求めた静電場と静磁場に完全に一致しなければならないことを話しました。
つまり、電荷分布や電流分布が時間的に変化しないとき、クーロンの法則とビオサバールの法則を使って求めた静電場と静磁場は十分に価値があるということです。本稿では、そのうちビオサバールの法則を使って、空間中の静磁場の表式をかくことについて考えます。
ビオサバールの法則
ここで、ビオサバールの法則、重ね合わせの原理および磁場の定義を再掲します。
原理1.3(ビオサバールの法則)
距離\(R\)離れた位置にある2つの電流素片\(I_1 \Delta \boldsymbol{s}_1\)、\(I_2 \Delta \boldsymbol{s}_2\)の間に、\(I_1 \Delta \boldsymbol{s}_1\)が作る磁場によって\(I_2 \Delta \boldsymbol{s}_2\)にはたらく力\(\Delta \boldsymbol{f}\)は、
$$
\Delta \boldsymbol{f} = \frac{\mu_0}{4\pi R^2} I_2 \Delta \boldsymbol{s}_2 \times (I_1 \Delta \boldsymbol{s}_1 \times \boldsymbol{n})
$$である(電流\(I_2\)の向きと、\(I_1\)がその場所に作る磁場の向きの双方に対して垂直方向となる)。ただし\(\mu_0\)は真空の透磁率、\(\boldsymbol{n}\)は\(1\)から\(2\)へ向かう単位ベクトルである。
原理1.4(静磁場における重ね合わせの原理)
3つの電流素片\(I\)、\(I_1\)、\(I_2\)が存在するときに\(I\)のうける磁気的な力は、\(I\)、\(I_1\)のみが存在するとき\(I\)が\(I_1\)から受ける力と、\(I\)、\(I_2\)のみが存在するとき\(I\)が\(I_2\)から受ける力のベクトル和である。
定義2.2(磁場の定義)
静止した電流分布に対して、この空間のある位置\(\boldsymbol{r}\)を速度\(\boldsymbol{v}\)で運動する単位電荷をおいたとき、単位電荷の受ける力\(\boldsymbol{f}\)が\(\boldsymbol{f} = \boldsymbol{v} \times \boldsymbol{B}(\boldsymbol{r})\)となるようなベクトル\(\boldsymbol{B}(\boldsymbol{r})\)を、その位置\(\boldsymbol{r}\)における静磁場と定義する。
ビオサバールの法則は、はるか遠くにある電荷どうしが互いに接することなく力を及ぼし合うという「遠隔作用」の立場で式が記述されています。これに対して、一般の力学や私たちの自然な考え方では、力は直接触れている他のものからのみ及ぼされるという理解が自然でしょう。これを踏まえてファラデーやマクスウェルがとったのは、電荷や電流が空間の性質を変え、この空間が場として力を順に伝えていき、他の電荷はそれが直接触れる周囲の空間から力を及ぼされるという「近接作用」の立場でしたね。以上の法則および定義より、次が直ちに成り立ちます。
系2.3.3
位置\(\boldsymbol{r_1}\),\(\boldsymbol{r_2}\),…,\(\boldsymbol{r_n}\)に、微小な電流素片\(I_1 \Delta \boldsymbol{l}_1\),\(I_2 \Delta \boldsymbol{l}_2\),…,\(I_n \Delta \boldsymbol{l}_n\)が存在するとき、位置\(\boldsymbol{r}\)における静磁場は、
$$
\boldsymbol{B}(\boldsymbol{r})=\sum_{1\le i\le n} \frac{\mu_0}{4\pi} \frac{I_i \Delta \boldsymbol{l}_i \times (\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r_i})}{|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r_i}|^3}
$$
系2.3.3の証明
定義2.2に従い、空間の位置\(\boldsymbol{r}\)における磁場\(\boldsymbol{B}(\boldsymbol{r})\)を求めるため、この位置に微小な試験電流素片\(I \Delta \boldsymbol{s}\)(これは電荷\(q\)が速度\(\boldsymbol{v}\)で運動することに相当する)を置いたと仮定する。
原理1.3(ビオサバールの法則)より、位置\(\boldsymbol{r_i}\)にある\(i\)番目の電流素片\(I_i \Delta \boldsymbol{l}_i\)が、位置\(\boldsymbol{r}\)にあるこの試験電流素片に及ぼす力\(\Delta \boldsymbol{f_i}\)を考える。2点間の距離は\(R = |\boldsymbol{r} – \boldsymbol{r_i}|\)であり、方向ベクトルは\(\boldsymbol{r} – \boldsymbol{r_i}\)であるため、
$$
\Delta \boldsymbol{f_i} = \frac{\mu_0}{4\pi |\boldsymbol{r} – \boldsymbol{r_i}|^2} I \Delta \boldsymbol{s} \times \left( I_i \Delta \boldsymbol{l}_i \times \frac{\boldsymbol{r} – \boldsymbol{r_i}}{|\boldsymbol{r} – \boldsymbol{r_i}|} \right) = I \Delta \boldsymbol{s} \times \left( \frac{\mu_0}{4\pi} \frac{I_i \Delta \boldsymbol{l}_i \times (\boldsymbol{r} – \boldsymbol{r_i})}{|\boldsymbol{r} – \boldsymbol{r_i}|^3} \right)
$$原理1.4(静磁場における重ね合わせの原理)より、試験電流素片が受ける全体の力\(\boldsymbol{F}\)は、個々の電流素片から受ける力のベクトル和となるので、
$$
\boldsymbol{F} = \sum_{i=1}^{n} \Delta \boldsymbol{f_i} = I \Delta \boldsymbol{s} \times \sum_{i=1}^{n} \left( \frac{\mu_0}{4\pi} \frac{I_i \Delta \boldsymbol{l}_i \times (\boldsymbol{r} – \boldsymbol{r_i})}{|\boldsymbol{r} – \boldsymbol{r_i}|^3} \right)
$$定義2.2より、試験電流素片(運動する電荷)が受ける力\(\boldsymbol{F}\)は、その地点における磁場\(\boldsymbol{B}(\boldsymbol{r})\)を用いて\(\boldsymbol{F} = (I \Delta \boldsymbol{s}) \times \boldsymbol{B}(\boldsymbol{r})\)と表されるため、右辺の括弧内が磁場となる。よって、
$$
\boldsymbol{B}(\boldsymbol{r}) = \sum_{1\le i\le n} \frac{\mu_0}{4\pi} \frac{I_i \Delta \boldsymbol{l}_i \times (\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r_i})}{|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r_i}|^3}
$$□
ここからさらに状況を発展させて、空間領域\(V’\)に電流が連続的に分布していることを考えてみます。空間領域\(V’\)を微小体積\(dV’\)に分割することを考え、またある位置\(\boldsymbol{r’}\)における電流密度を\(j(\boldsymbol{r’})\)とすると、この連続的な電流分布は電流素片\(j(\boldsymbol{r’}) dV’\)の集まりとみなせるので、和は積分に書き換えて次が成り立つことが分かるでしょう。
系2.3.4
空間領域\(V’\)に電流が連続的に分布しているとき、ある位置\(\boldsymbol{r’}\)における電流密度ベクトルを\(\boldsymbol{j}(\boldsymbol{r’})\)とすると、位置\(\boldsymbol{r}\)における静磁場は
$$
\boldsymbol{B(\boldsymbol{r})}=\displaystyle \int_{V’} \frac{\mu_0}{4\pi} \frac{\boldsymbol{j}(\boldsymbol{r’}) \times (\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r’})}{|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r’}|^3} dV’
$$
この表式がビオサバールの法則による空間中の静磁場の表式であって、電流分布が時間変化しないときの静磁場の厳密な解になります。

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