ハミルトニアンと一般化運動量

こんにちは、turtleです。現在力学を学んでおりまして、その備忘録のような形でこのブログを書かせていただいております。基本的に大学の内容となっていますが、数式さえ乗り越えれば高校生でも理解できると思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。

親記事で述べたように、ラグランジュ力学とハミルトン力学は、古典力学を記述する枠組みとして原則として互いに等価であり、数学的な変換を通じて自由に行き来することができます。そこで本稿では、ラグランジュ力学からハミルトン力学への移行、すなわちオイラー=ラグランジュ方程式から出発して正準方程式を導く流れを確認しようと思います。
その前に親記事で定義した、一般化運動量について少し確認します。

まず、定義2.3を再掲します。

定義2.3(一般化運動量の定義)
力学系の一般化座標を\(\boldsymbol{q}=(q_1,q_2,…,q_N)\)としたとき、力学系に対応してラグランジアン\(L(\boldsymbol{q}, \dot{\boldsymbol{q}}, t)\)が定まるならば、\(\frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i}\)を一般化運動量\(p_i\)と定義する。

ここで、一般化運動量というのは運動量と名前がついていますが、必ずしも古典力学で定義した運動量であるとは限らず、一般化座標\(q_i\)の変化に対応する共役な量で、ラグランジアンを\(q_i\)で偏微分して得られる物理量以上のなにものでもないことを注意しておきます。
例えば、ある質点の位置を3次元円筒座標で記述するとき、\(\phi\)は\(z\)軸回りの回転角として定義されますが、この系のラグランジアンが(運動エネルギー)\(-\)(一般化ポテンシャル)でかけるならば、これに共役な運動量である\(\frac{\partial L}{\partial \dot{\phi}}\)は角運動量ベクトルの\(z\)軸成分であることが知られています。これは、
$$
p_\phi = \frac{\partial L}{\partial \dot{\phi}} = \frac{\partial K}{\partial \dot{\phi}} = \frac{\partial K}{\partial \dot{x}} \frac{\partial \dot{x}}{\partial \dot{\phi}} + \frac{\partial K}{\partial \dot{y}} \frac{\partial \dot{y}}{\partial \dot{\phi}} + \frac{\partial K}{\partial \dot{z}} \frac{\partial \dot{z}}{\partial \dot{\phi}} = \boldsymbol{p} \cdot (\boldsymbol{e}_z \times \boldsymbol{r}) = \boldsymbol{e}_z \cdot (\boldsymbol{r} \times \boldsymbol{p})
$$より示されます。ただし、4つ目の等号は\(\delta \boldsymbol{r} = (\boldsymbol{e}_z \times \boldsymbol{r}) \delta \phi\)であることを、5つ目の等号はスカラー3重積を用いています。

さて、これからは、ラグランジュ力学からハミルトン力学への移行、すなわちオイラー=ラグランジュ方程式から出発して正準方程式を導く流れを確認しようと思います。
ラグランジュ力学の原理であるオイラー=ラグランジュ方程式と、ハミルトン力学の原理である正準方程式を再掲しておきます。

原理2.2(オイラーラグランジュ方程式)
力学系の一般化座標を\(\boldsymbol{q}=(q_1,q_2,…,q_N)\)としたとき、力学系に対応してラグランジアン\(L(\boldsymbol{q}, \dot{\boldsymbol{q}}, t)\)が定まるならば、\(i=1,2,…,N\)に対して以下が成り立つ。
$$
\frac{\partial L}{\partial q_i} – \frac{d}{dt} \frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i} =0
$$

原理2.5(正準方程式)
力学系の一般化座標を\(\boldsymbol{q}=(q_1,q_2,…,q_N)\)、力学系の一般化運動量を\(\boldsymbol{p}=(p_1,p_2,…,p_N)\)としたとき、力学系に対応してハミルトニアンを\(H(\boldsymbol{q}, \boldsymbol{p},t)\)が定まるならば、\(i=1,2,…,N\)に対して以下が成り立つ。
$$
\frac{\partial H}{\partial q_i} = – \dot{p}_i \qquad
\frac{\partial H}{\partial p_i} = \dot{q}_i
$$

原理2.2を仮定すると、そこから原理2.5が導出できることの証明

定義2.4にしたがって定義されたハミルトニアン\(H(\boldsymbol{q}, \boldsymbol{p}, t) = \sum_{i=1}^N p_i \dot{q}_i- L\)の全微分を計算すると、
\begin{align}
dH &= \sum_{i=1}^N (\dot{q}_i dp_i + p_i d\dot{q}_i) – dL = \sum_{i=1}^N \dot{q}_i dp_i + \sum_{i=1}^N p_i d\dot{q}_i – \left( \sum_{i=1}^N \frac{\partial L}{\partial q_i} dq_i + \sum_{i=1}^N \frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i} d\dot{q}_i + \frac{\partial L}{\partial t} dt \right)\\
&= \sum_{i=1}^N \dot{q}_i dp_i + \sum_{i=1}^N p_i d\dot{q}_i – \left( \sum_{i=1}^N \dot{p}_i dq_i + \sum_{i=1}^N p_i d\dot{q}_i + \frac{\partial L}{\partial t} dt \right) \\
&=\sum_{i=1}^N \dot{q}_i dp_i – \sum_{i=1}^N \dot{p}_i dq_i – \frac{\partial L}{\partial t} dt \qquad \text{(a)}
\end{align}となる。ただし、3つ目の等号は原理2.2のオイラー=ラグランジュ方程式\(\frac{\partial L}{\partial q_i} = \dot{p_i}\)と、一般化運動量の定義\(p_i=\frac{\partial L}{\partial \dot{q}_i}\)を用いた。一方で、\(H\)は\(\boldsymbol{q}, \boldsymbol{p}, t\)の関数として定義されているため、数学的な全微分の定義から、次のように書けるはずである。
$$
dH = \sum_{i=1}^N \frac{\partial H}{\partial q_i} dq_i + \sum_{i=1}^N \frac{\partial H}{\partial p_i} dp_i + \frac{\partial H}{\partial t} dt \qquad \text{(b)}
$$(a)式と(b)式は、全く同じ\(dH\)を表しているから、独立な微小変位\(dp_i\)と\(dq_i\)の係数をそれぞれ比較することで、以下が示される。
$$
\frac{\partial H}{\partial q_i} = – \dot{p}_i \qquad
\frac{\partial H}{\partial p_i} = \dot{q}_i
$$

これより数学的な変換を通じて、ラグランジュ力学からハミルトン力学へ移行できることが分かりました。実はこの移行過程ではルジャンドル変換を行っていて、定理2.2.15ですでにこの変換については扱っています。定理2.2.15やその系2.2.16では独立変数\(\dot{q}_1,\dot{q}_2,…,\dot{q}_N\)のうちのいくつかについてのみ、対応する一般化運動量に変数変換を行いましたが、本稿では独立変数\(\dot{q}_1,\dot{q}_2,…,\dot{q}_N\)をすべて\(p_1,p_2,..,p_N\)にとりかえていることが分かりますね。

さて、どこか腑に落ちないところがあるかもしれません。
例えば、もとはといえば\(\frac{\partial L}{\partial \dot{q_i}} = p_i\)というふうに\(\dot{q_i}\)を用いて\(p_i\)を定義したのに、ハミルトン力学では\(\frac{\partial H}{\partial p_i} = \dot{q}_i\)というように\(p_i\)が先にあるような扱いを受けているという点。これはルジャンドル変換によって\(\dot{q}\)と\(p\)の立場が逆転しているため、ハミルトン力学の世界では\(p\) こそが最初から存在する変数であるとしてみていいため問題ないわけです。

それから、\(q_i\)と\(\dot{q_i}\)が独立変数であったラグランジュ力学においては、\(q_i\)と\(\dot{q_i}\)は時間微分で関連付けられていたけれど、ハミルトン力学になると\(q_i\)と\(p_i\)が無関係の独立変数となってしまって情報が減っている気がするという点。これはそもそもラグランジュ力学の時点で\(q_i\)と\(\dot{q}_i\)は数式の上では無関係の独立変数であって、それらが時間微分という関係で結ばれるのは、実は実際に物体が動く現実の軌道の上だけの話であるため気にしないでいいのです。

まあ多かれ少なかれ、ラグランジュ力学からハミルトン力学へ移行する際に、\(q_i\)と\(p_i\)が独立だというところでなにか感覚的に抵抗がおきるのは自然で、これはいずれ解決すればいいことです。
別の稿では、ハミルトン力学に特有の考え方として、位相空間ポアソン括弧を紹介しています。ハミルトン力学の醍醐味はここにあります。

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