スカラーポテンシャル

こんにちは、turtleです。現在電磁気学を学んでおりまして、その備忘録のような形でこのブログを書かせていただいております。基本的に大学の内容となっていますが、数式さえ乗り越えれば高校生でも理解できると思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。

親記事で数学的道具として導入したスカラーポテンシャル\(\phi\)やベクトルポテンシャル\(\boldsymbol{A}\)ですが、一方で物理的な意味付けとしては、とくに本稿で扱うスカラーポテンシャル\(\phi\)は「電磁誘導(磁場の変化)の影響を無視したときの、純粋な電荷による位置エネルギー」を表しています。時間変化しない電磁場が形成されているときはこれを「電位」とよぶのでした。
そこで本稿では、高校のころに定義した電位と、電磁場が時間変化しないときのスカラーポテンシャル\(\phi\)が同じものであることを確認しようと思います。

まずは高校の頃の電位の定義に立ち返ってみましょう。
補題2.4.4.5より、静止した電磁場が形成されているとき、任意の電荷分布に対して静電気力は保存力になるのでした。このとき、始点と終点を定めると、それを結ぶ任意の経路で単位電荷を動かすときの、電気的な力に釣り合わせる外力の仕事が一意に定めることができます。
始点として基準点\(\boldsymbol{r_0}\)を一つ決めると、始点から各位置\(\boldsymbol{r}\)へ任意の経路で単位電荷を動かすときの、電気的な力に釣り合わせる外力の仕事は、位置\(\boldsymbol{r}\)のみに依存して決まる関数になるといえるので、この仕事の値を、\(\boldsymbol{r_0}\)を基準とした位置\(\boldsymbol{r}\)の電位\(\phi(\boldsymbol{r})\)と定義していましたね。

定義2.5.1(電位の定義)
始点として基準点\(\boldsymbol{r_0}\)を一つ決めたときの、始点から各位置\(\boldsymbol{r}\)へ任意の経路で単位電荷を動かすときの、電気的な力に釣り合わせる外力の仕事を、\(\boldsymbol{r_0}\)を基準とした位置\(\boldsymbol{r}\)の電位\(\phi(\boldsymbol{r})\)と定義する。
なお、ふつう基準点\(\boldsymbol{r_0}\)は無限遠にとることとする。

このとき、クーロンの法則と重ね合わせの原理から次のことが分かります。

系2.5.2
ある位置\(\boldsymbol{r’}\)における電荷密度を\(\rho(\boldsymbol{r’})\)とすると、位置\(\boldsymbol{r}\)における無限遠を基準とした電位\(\phi(\boldsymbol{r})\)は
$$
\phi(\boldsymbol{r})=\displaystyle \int_{V’} \frac{\rho(\boldsymbol{r’})dV’}{4\pi\epsilon_0|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r’}|}
$$

系2.5.2の証明

位置\(\boldsymbol{r_1}\),\(\boldsymbol{r_2}\),…,\(\boldsymbol{r_n}\)に、点電荷\(q_1\),\(q_2\),…,\(q_n\)が静止しているとして、\(q_1\),\(q_2\),…\(q_n\)がそれぞれ単独で作る電場を\(\boldsymbol{E}_1\),\(\boldsymbol{E}_2\),…\(\boldsymbol{E}_n\),…とすると、位置\(\boldsymbol{r}\)における電場は
$$
\boldsymbol{E}(\boldsymbol{r})=\sum_{1\le i\le n} \frac{q_i}{4\pi\epsilon_0} \frac{\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r_i}}{|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r_i}|^3}
$$とかける。この電荷分布が形成されている空間において、無限遠\(\boldsymbol{r}_\infty\)から各位置\(\boldsymbol{r}\)へ任意の経路で単位電荷を動かすときの、電気的な力に釣り合わせる外力の仕事は、
$$
\phi(\boldsymbol{r})= -\displaystyle \int_{\boldsymbol{r}_\infty}^{\boldsymbol{r}} \boldsymbol{E}(\boldsymbol{r}) \cdot d\boldsymbol{r} = -\displaystyle \int_{\boldsymbol{r}_\infty}^{\boldsymbol{r}} \left( \sum_{1\le i\le n} \boldsymbol{E}_i(\boldsymbol{r}) \right) \cdot d\boldsymbol{r} = -\sum_{1\le i\le n} \displaystyle \int_{\boldsymbol{r}_\infty}^{\boldsymbol{r}} \boldsymbol{E}_i(\boldsymbol{r}) \cdot d\boldsymbol{r}
$$とかくことができる。ここで、\(\displaystyle \int_{\boldsymbol{r}_\infty}^{\boldsymbol{r}} \boldsymbol{E}_i(\boldsymbol{r}) \cdot d\boldsymbol{r}\)は経路に依存しないため、位置\(\boldsymbol{r}\),\(\boldsymbol{r}_i\)を結んで無限遠までのびる直線経路での線積分を考えると、電荷\(q_i\)からの距離\(r=|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r}_i|\)を被積分変数にとって、
$$
\displaystyle \int_{\boldsymbol{r}_\infty}^{\boldsymbol{r}} \boldsymbol{E}_i(\boldsymbol{r}) \cdot d\boldsymbol{r} = \displaystyle \int_{\infty}^{|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r}_i|} \frac{q_i}{4\pi\epsilon_0 r^2} dr =- \frac{q_i}{4\pi\epsilon_0 |\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r}_i|}
$$と計算することができる。これをもとの式に代入すると、
$$
\phi(\boldsymbol{r})= \sum_{1\le i\le n} \frac{q_i}{4\pi\epsilon_0 |\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r}_i|}
$$よって、連続的な電荷分布においては、点電荷\(\rho(\boldsymbol{r’}) dV’\)の集まりとみなせるので、和は積分に書き換えて次が成り立つことが分かる。
$$
\phi(\boldsymbol{r})=\displaystyle \int_{V’} \frac{\rho(\boldsymbol{r’})dV’}{4\pi\epsilon_0|\boldsymbol{r}-\boldsymbol{r’}|}
$$

定理2.5.3(電場と電位の関係)
ある位置\(\boldsymbol{r}\)における電場を\(\boldsymbol{E}(\boldsymbol{r})\)、電位を\(\phi(\boldsymbol{r})\)すると、
$$
\boldsymbol{E(\boldsymbol{r})} = – \nabla \phi(\boldsymbol{r})
$$

定理2.5.3の証明

十分小さい\(\Delta x\)に対して、位置\((x,y,z)\)から位置\((x+\Delta x,y,z)\)へ単位電荷を動かすときの、電気的な力に釣り合わせる外力の仕事\(\Delta W\)は、\(\Delta W \simeq -\boldsymbol{E}(x,y,z) \cdot \Delta x \boldsymbol{e}_x = – E_x(x,y,z) \Delta x\)とかくことができる。
電位の定義より、位置\((x,y,z)\)から位置\((x+\Delta x,y,z)\)へ単位電荷を動かすときの、電気的な力に釣り合わせる外力の仕事\(\Delta W\)は、位置\((x,y,z)\)を基準とした位置\((x+\Delta x,y,z)\)の電位\(\phi(x+\Delta x,y,z)-\phi(x,y,z)\)に等しいから、
$$
E_x \simeq -\frac{\phi(x+\Delta x,y,z)-\phi(x,y,z)}{\Delta x}
$$等号は\(\Delta x \rightarrow 0\)のときに成立し、\(E_x = -\frac{\partial \phi}{\partial x}\)となる。
\(y\)方向や\(z\)方向にも同様に、\(E_y = -\frac{\partial \phi}{\partial y}\)、\(E_z = -\frac{\partial \phi}{\partial z}\)が成立するので、以下が成立する。
$$
\boldsymbol{E(\mathbf{r})} = – \nabla \phi(\mathbf{r})
$$

ところで、親記事においては、以下のような流れでスカラーポテンシャル\(\phi\)やベクトルポテンシャル\(\boldsymbol{A}\)を導入したのでした。

定理2.5
電場\(\boldsymbol{E}\)、磁場\(\boldsymbol{B}\)について、
$$
\boldsymbol{E} = -\nabla \phi – \frac{\partial \boldsymbol{A}}{\partial t}
$$$$
\boldsymbol{B} = \nabla \times \boldsymbol{A}
$$なるスカラー場\(\phi\)とベクトル場\(\boldsymbol{A}\)が必ず存在する。

定義2.6(スカラーポテンシャル、ベクトルポテンシャルの定義
定理2.5におけるスカラー場\(\phi\)とベクトル場\(\boldsymbol{A}\)を、それぞれスカラーポテンシャル、ベクトルポテンシャルと定義する。

つまり、電磁場が時間変化しないときには、ベクトルポテンシャル\(\boldsymbol{A}\)の時間微分は0になることから、このときスカラーポテンシャル\(\phi\)とは、\(\boldsymbol{E} = -\nabla \phi\)を満たすスカラー場\(\phi\)のことに他なりません。
定理2.5.3より、電位は\(\boldsymbol{E} = -\nabla \phi\)を満たしますので、高校のころに定義した電位と、電磁場が時間変化しないときのスカラーポテンシャル\(\phi\)は同じものであることが確認できました。

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